先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「経費をしっかり使って法人税を抑えているつもりなのに、まだ見落としがあるんですか」と。

実は、多くの社長が見落としているのが「賃上げ促進税制」という制度です。従業員への給与を増やした企業に対して、その増加額の一部を法人税額から直接控除できる仕組みなのですが、これが2027年3月までの時限措置だということはあまり知られていません。

控除率は最大45%。従業員への給与を増やした分の45%が、そのまま法人税額から差し引かれる計算になります。単純に聞くと「給与を増やせば増やすほど得」に思えるかもしれません。

ただし実際には、控除できる上限が法人税額の20%までと決まっています。つまりどれだけ給与を増やしても、法人税額の20%を超える分は控除に反映されません。ここが多くの社長がつまずくポイントです。

例えば法人税額が1000万円の会社であれば、控除の上限は200万円です。給与増加額の45%がこの200万円を超えた時点で、それ以上給与を増やしても税制上のメリットは頭打ちになります。闇雲に賃上げ計画を立てると、期待した節税効果が得られないまま人件費だけが膨らむ、という事態になりかねません。

従業員30名ほどの会社で、全員に一律5%の賃上げをしようとしたケースを見たことがあります。人件費の増加額から機械的に45%を計算すると、法人税額の20%枠を大きく超えていました。結局、賃上げ幅を見直して段階的に実施する形に落ち着きましたが、先に試算していなければ「増やしすぎて控除の恩恵を活かせない」まま進めていたはずです。

とはいえ、この制度自体は今のうちに動く価値があります。2027年3月で終了する時限措置ですから、賃上げを検討している社長にとっては「制度があるうちに使い切る」という発想が重要になります。

決算期をまたいで給与テーブルの見直しを検討している会社であれば、控除額のシミュレーションを先に行っておくのが得策です。法人税額の見込みと給与増加額のバランスを事前に把握しておけば、どこまで賃上げすれば最も効率よく控除を受けられるかが見えてきます。

  • 給与増加額×最大45%と、法人税額×20%を比べて、小さい方が実際の控除額になる
  • 決算期をまたぐ賃上げ計画は、控除上限を先に試算してから動く
  • 2027年3月で制度自体が終了するため、検討中の会社は今期・来期が実質的なラストチャンス

効果はケースによって大きく異なります。従業員数や給与水準、法人税額の規模によって「どこまで賃上げすれば最も得か」の答えは会社ごとに変わってきますので、税理士に試算してもらったうえで計画を立てるのが確実です。

賃上げを検討しているなら、制度が使えるうちに一度、控除額のシミュレーションを税理士に依頼しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。