先日、年商8億円の製造業の社長からこんな相談を受けました。「毎月の役員報酬が高くて、社会保険料の負担がじわじわ効いている。何か手はないか」と。

決算書を見せてもらうと、月額報酬をそのまま12ヶ月払い続けている、ごく一般的な支払い方でした。実はこの支払い方、社会保険料の観点では損をしている可能性があります。

月給の一部を賞与に回すだけで社保が動く

結論から言うと、月給の10%程度を賞与に振り替えるだけで、年間の社会保険料負担が下がるケースがあります。

理由はシンプルです。月々の給与にかかる社会保険料には実質的に青天井に近い仕組みがある一方、賞与にかかる社会保険料には明確な上限が設けられているからです。

厚生年金保険料の計算対象になる賞与額は、1回あたり150万円が上限です。150万円を超える部分には、そもそも保険料がかかりません。

健康保険料の方はもう少し緩やかで、年間の賞与額の累計573万円が上限になります。こちらも、この金額を超えた部分には保険料が発生しません。

なぜ10%なのか

月給を高く設定したまま毎月払い続けると、その全額が毎月の社会保険料の計算対象になります。一方で、同じ金額を賞与として年に1〜2回で支払えば、上限を超える部分は保険料の対象から外れます。

例えば月額報酬100万円の社長が、その10%にあたる10万円を毎月の報酬から減らし、年2回の賞与(1回あたり60万円)に振り替えたとします。月額報酬が下がった分、月々の社会保険料の計算基礎である標準報酬月額も下がります。賞与側は150万円の上限に対してまだ余裕がある水準なので、振り替えた分にもきちんと保険料はかかりますが、月額側で下がった負担と比べると、トータルでは有利になりやすい、というのがこのスキームの考え方です。

報酬額や会社の給与体系によって効果の出方は変わるため、実際にどの程度の振り替えが最適かは、シミュレーションをしてから決めるのがおすすめです。

落とし穴は「届出通り」であること

ここで一番注意してほしいのが、役員賞与を損金にするための「事前確定届出給与」の届出です。

役員に対する賞与は、原則として損金に算入できません。ただし、あらかじめ税務署に「いつ、いくら払うか」を届け出ておけば、その届出通りに支払った場合に限り、損金算入が認められます。

ここでよくある失敗が、業績が悪化したからと賞与を減額したり、逆に資金繰りに余裕ができたからと増額したりすることです。届出額と1円でも異なる金額を支払うと、その賞与全体が損金不算入になってしまいます。減額どころか、まったく効果がなくなるどころか、税負担がむしろ増えてしまうケースすらあります。

振り替える金額を決めたら、届出書に記載した金額と支払日を、その通りに実行し切る覚悟が必要です。業績変動が大きい会社ほど、無理のない金額設定にしておくことが重要になります。

月給と賞与の配分を見直すだけで、社会保険料の負担は変わってきます。まだ役員報酬を全額月給で払っているなら、次の期の報酬改定のタイミングで、賞与への振り替えを検討してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。