先日、従業員10名ほどの建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。「毎年夏に自分への賞与を500万円出してるんですけど、手元に残るのって思ったより少ないんですよね」と。

話を聞いていくと、その社長は役員賞与を毎年500万円受け取りつつ、社会保険料の負担については深く考えたことがなかったそうです。

計算してみると、なかなか驚く数字が出てきます。

役員賞与500万円にかかる社会保険料の実態

役員賞与は、健康保険料と厚生年金保険料の対象になります。賞与500万円に対して、会社側と本人側それぞれに保険料が発生し、合計すると80〜100万円近くになることがあります。

つまり、会社から500万円を賞与として支払っても、その2割近くが社会保険料として消えていく計算です。手取りベースで考えると、さらに所得税・住民税も引かれますから、最終的に社長の財布に残る金額はかなり目減りします。

「賞与を出した気になっていたけど、実は半分近くが税と保険料で消えていた」という感覚を持つ社長は、決して少なくないのです。

なぜ夏賞与で損をしやすいのか

社会保険料の計算には「標準報酬月額」と「標準賞与額」という2つの仕組みがあります。月次の役員報酬は区分ごとに保険料が決まりますが、賞与は支給された金額にそのまま保険料率が掛かります。

月次報酬には一定の上限構造がありますが、賞与の場合は年間の上限枠内であれば支給額に比例して保険料も増えていきます。

つまり、ドカッとまとめて夏賞与として出すほど、社会保険料の負担も一気に膨らむ構造になっているのです。毎年この季節に「なんとなく慣例で500万円」と出し続けているとしたら、その設計を一度疑ってみる価値があります。

同じ500万円を「退職金」として積み立てると何が変わる?

同じ500万円を社長に渡すにしても、「賞与」ではなく「退職金」として将来に積み立てる方法があります。

退職金には「退職所得控除」という強力な制度が使えます。勤続年数が長いほど控除額が大きくなり、たとえば勤続20年の場合は800万円まで非課税で受け取れます。さらに控除後の残額も2分の1に圧縮されてから課税されるため、同じ金額でも税負担が大幅に下がります。

積み立て方法としては、中小企業退職金共済(中退共)や、役員向けには生命保険を活用した退職金準備スキームなどがあります。いずれも会社側の損金算入が認められるケースが多く、節税効果も期待できます。

ただし、退職金積立は「支給タイミングを先送りする」選択肢です。今すぐ手元資金が必要な局面には向きませんし、過大な退職金は税務調査で問題になることもあります。設計は必ず専門家と一緒に行ってください。

もう一つの選択肢:月次報酬への分散

「退職金積立は先の話すぎる」という方には、月次の役員報酬に分散して支給する方法もあります。

標準報酬月額には等級ごとの区分があり、ある水準を超えると報酬を増やしても社会保険料が増えにくくなる「頭打ち」のポイントが存在します。賞与として一括支給するよりも、月次報酬に組み込む形で設計すると、社会保険料の総額が変わってくることがあるのです。

ただし、役員報酬の変更は定期同額給与のルールに従わないと損金算入が認められなくなるリスクがあります。期中に勝手に変更することはできませんし、社会保険の手続きも伴います。こうした設計変更は、必ず顧問税理士・社会保険労務士と事前に相談してから動くのが鉄則です。

今年の夏賞与の前に確認しておくこと

もし毎年夏にまとまった役員賞与を支給しているなら、一度立ち止まって支給設計を見直してみてください。確認してほしいポイントは3つです。

  • 賞与の支給額に対してどれくらいの社会保険料が発生しているか把握しているか
  • 退職金の積立プランはすでに設計されているか
  • 月次報酬の設定金額は最適化されているか

「よくわからないまま毎年同じように賞与を出している」という状態が一番もったいないです。500万円の賞与に100万円近い社会保険料が乗っているとしたら、それを知った上で判断するのと、知らずに払い続けるのとでは大違いです。

今年の夏賞与を支給する前に、顧問税理士に「今の支給設計、本当に最適ですか?」と一声かけてみることをおすすめします。その一言が、年間数十万円の差を生むことがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。