先日、設立してまだ日の浅い会社の社長からこんな相談を受けました。

「法人税ってだいたい35%くらい取られるんですよね……決算が怖くて」

実はこれ、かなり多くの経営者が抱いている誤解です。結論から言うと、資本金1億円以下の中小法人であれば、年間所得800万円までの部分にかかる法人税率は15%です。設立1年目だろうと10年目だろうと関係ありません。

なぜ15%で済むのか

法人税の基本税率は本来23.2%です。ただし国は中小企業の資金繰りを支援する目的で、資本金1億円以下の法人に対して軽減税率という制度を用意しています。

この軽減税率が適用されるのが、年間所得のうち800万円以下の部分です。つまり利益が800万円までなら、税率はほぼ半分近くまで下がる計算になります。

先ほどの社長も、顧問税理士から「800万円までは15%ですよ」と説明を受けて、拍子抜けしたそうです。実際にシミュレーションしてみると、所得700万円の会社なら法人税額はおよそ105万円。23.2%で計算した場合の約162万円と比べると、57万円近い差が生まれます。

800万円を超えた瞬間に何が起きるか

注意したいのは、800万円を超えた部分にはこの軽減税率が適用されないという点です。超過分には基本税率の23.2%がかかります。

たとえば所得が1000万円の会社であれば、次のような内訳になります。

  • 800万円までの部分:15%課税 → 120万円
  • 超過した200万円の部分:23.2%課税 → 約46万円

合計でおよそ166万円の法人税額です。「1000万円稼いだら一律23.2%取られる」わけではなく、あくまで800万円のラインを境に税率が切り替わる仕組みだと理解しておくと、決算前の資金繰りシミュレーションがぐっと立てやすくなります。

決算対策を考えるタイミングが変わる

この仕組みを知っているかどうかで、決算前の動き方も変わってきます。所得が800万円をわずかに超えそうなタイミングであれば、役員報酬の見直しや設備投資の前倒しなど、所得を800万円以下に抑える選択肢を検討する余地が生まれるからです。

逆に言えば、800万円のラインを大きく超える見込みなら、無理に圧縮するより超過分の税負担を織り込んだ上で、次の投資や採用にどう資金を回すかを考えたほうが建設的な場合もあります。

いずれにしても、この境界線を知らないまま決算日を迎えるのと、あらかじめ把握した上で迎えるのとでは、打てる手の数がまったく違います。

まだ自社の資本金や所得の水準から軽減税率が適用されるかを確認していないなら、次の決算を待たずに一度顧問税理士に聞いてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。