先日、創業8年になる製造業の社長から、こんな相談を受けました。「取引先との会食は経費にできないんですよね?だから最近は自腹で払っています」。決算書を見せてもらうと、たしかに交際費の計上額はゼロに近い状態でした。
結論から言うと、これはかなりもったいない状態です。資本金1億円以下の中小法人であれば、交際費のうち年800万円までを損金にできる枠が用意されています。
なぜ800万円まで使えるのか
交際費は本来、法人税法上「損金にしにくい経費」として扱われてきました。使途が不明瞭になりやすく、税負担を不当に減らす手段になりかねないためです。
ただし、それでは接待や贈答を通じて取引関係を築く中小企業の実態に合わないため、租税特別措置として中小法人向けの緩和策が設けられています。それが年800万円までの定額控除枠です。
この枠に収まる金額であれば、交際費として堂々と損金算入できます。ゼロから自腹に切り替える必要はありません。
枠が使えるかは会社の規模次第
この800万円枠は、すべての法人が使えるわけではありません。適用できるかどうかは、資本金の額によって区分が分かれます。
- 資本金1億円以下の法人:年800万円までの定額控除、または接待飲食費の50%損金算入のいずれか有利な方を選択できます
- 資本金1億円超100億円以下の法人:接待飲食費の50%のみ損金算入できます
- 資本金100億円超の法人:交際費は原則として損金算入できません
多くの中小企業は最初の区分に該当するはずです。自社の資本金がいくらか、決算書で一度確認しておくとよいでしょう。
そもそも何が交際費にあたるのか
交際費の範囲を正しく把握していないと、せっかくの枠を使いきれません。一般的に交際費として認められるのは、次のようなものです。
- 取引先との会食、接待にかかる飲食代
- お中元やお歳暮などの贈答品
- 取引先の慶弔にともなう祝儀・香典
- ゴルフや旅行など、取引関係の維持を目的とした接待費用
一方で、社内の慰労を目的とした飲食代は福利厚生費、単なる商品説明のための費用は会議費として扱われることもあります。境界があいまいなケースも多いため、迷ったときは都度、税理士に確認する習慣をつけておくと安心です。
記録を残すことが枠を守る鍵になる
800万円の枠内であっても、税務調査で否認されないためには記録が欠かせません。最低限、次の情報は残しておいてください。
- 日時と場所
- 相手先の会社名・氏名
- 参加人数
- 金額と支払方法
- 会食や贈答の目的
領収書だけでは、誰と何のために使ったのかまでは分かりません。手帳やスプレッドシートでも構わないので、その場でメモを残す習慣が、後々の税務調査での説明力を大きく左右します。
交際費は「使えない経費」ではなく、「枠の中で正しく使えば認められる経費」です。まだ資本金区分を確認していない社長は、今期の決算前に一度、自社がどの枠に当てはまるか確認しておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。