先日、飲食業を経営する社長からこんな相談を受けました。

「毎月それなりに接待もしてるし、交際費もかなり使ってるんですけど、税理士から『枠が余ってますよ』って言われて。どういうことなのか、正直よくわかってなくて……」

この社長、年間の交際費が400万円ほどだったのですが、中小企業に認められた800万円の枠に対してちょうど半分しか使えていなかったんです。損をしている、というより「もったいない」という感覚が近いかもしれません。

今回は、交際費まわりで損をしている社長に共通する3つのパターンをお伝えします。思い当たるところがあれば、ぜひ今期中に見直してみてください。


領収書に「誰と・何のため」が書いていない

まず最初に確認してほしいのが、領収書の裏側や備考欄の記載です。

交際費として損金算入するためには、「誰と(相手の会社名・氏名)」「何のために使ったか(商談、接待、取引先の慰労など)」が記録として残っていることが非常に重要です。

税務調査が入ったとき、この記載がないと「業務との関連性が不明」として否認されるリスクがあります。仮に年間800万円の交際費を計上していたとして、それが全額否認されれば、法人税の追加負担だけで数百万円規模になることも珍しくありません。

「飲み会の翌日に書こうと思ってたら忘れてた」という社長は本当に多いです。面倒でも、その日のうちにメモしておく習慣をつけるだけで、税務リスクはぐっと下がります。経費精算アプリを使っているなら、写真を撮るついでにコメントを入力するだけでOKです。


1人あたり5,000円以下の飲食費を「交際費」に入れてしまっている

次に見直してほしいのが、少額の飲食費の扱いです。

実は、1人あたりの飲食代が5,000円以下の場合、交際費の枠を使わずに「会議費」などとして全額損金にできる特例があります。これ、意外と知らない社長が多いんです。

たとえば4人で食事をして合計18,000円だったとすると、1人あたり4,500円になりますよね。このケースでは交際費扱いにしなくても、全額損金算入できます。

一方で、この特例を使うためには「参加人数」「1人あたりの金額」「目的」を記録しておく必要があります。領収書にさっと書き添えるだけで使える特例なので、ぜひ活用してください。

交際費の800万円枠は温存しつつ、5,000円以下の飲食は別枠で処理する。このふたつをうまく使い分けるだけで、節税効果がじわじわ積み上がっていきます。


そもそも800万円の枠を使い切っていない

これが一番もったいないパターンです。

中小企業(資本金1億円以下)は、年間800万円までの交際費を損金算入できます。法人税率が約23%とすると、800万円フルで使えば約184万円分の節税効果があります。

ところが、実態として7割以上の中小企業がこの枠を余らせているといわれています。「使い切れていない=節税のチャンスを捨てている」とも言えるわけです。

もちろん、無駄な接待をしろという話ではありません。ただ、「どうせ経費にならないだろう」と思って自腹で払っていたゴルフ代や贈答品代、取引先との食事代が、実は交際費として計上できるケースは多いです。

決算が近くなってから焦って使おうとしても、実態を伴わない支出は当然NGです。日頃から意識して、正当なビジネス交際を記録・申告する習慣を持つことが大切です。


結局、記録と知識の差が節税額の差になる

交際費の節税は、特別な仕組みや裏技があるわけではありません。「800万円の枠がある」「5,000円ルールがある」「記録が命」——この3点を知っているかどうか、そして実行しているかどうかの差が、数十万〜数百万円の差になって決算に現れます。

顧問税理士がいる方は、一度「今期の交際費の消化状況と、枠の残りを教えてください」と確認してみてください。意外と残っていることに気づくはずです。

まだ交際費の管理ルールが曖昧なまま、なんとなく経費精算しているなら、今期中に社内ルールを整えておくのが得策です。記録の習慣ひとつで、来期の節税額が変わってきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。