先日、取引先との会食が多い卸売業の社長から、こんな質問を受けました。「年間で交際費を結構使っているんですが、全部経費になりますよね?」
少し間を置いてから答えました。「原則として、半分しかなりません」と。
社長の顔が一瞬固まりました。「え、全額じゃないんですか?」という反応。実はこれ、かなり多くの経営者が勘違いしているポイントです。
法人交際費は「50%しか経費にならない」が原則
法人が支出した交際費は、その50%しか損金(税務上の経費)に算入できません。
たとえば年間200万円の接待費を使ったとします。帳簿上は200万円の支出として記録されますが、法人税を計算するときに経費として認められるのは100万円だけ。残りの100万円は「使ったけれど税務上は経費にならないお金」として扱われます。
法人税率を約30%とすると、この100万円の損金不算入によって、余計に約30万円の税金を払うことになります。「全額経費のつもりで使っていたのに」という話になりかねません。交際費が多い会社ほど、このインパクトは年々積み上がっていきます。
中小企業なら「800万円まで全額OK」の特例がある
ただし、資本金1億円以下の中小企業には大きな救済策があります。
年間800万円までの交際費であれば、全額を損金算入できる特例が認められています。大企業の50%ルールとは違い、「使った分はそのまま全額経費」として扱えます。
200万円の交際費なら全額経費、500万円でも全額経費。申告のたびに「全額損金」か「50%損金」かを選択できるので、自社の状況に合わせて判断できます。ほとんどの中小企業にとっては全額損金を選ぶほうが有利で、この特例を知っているかどうかだけで年間の税負担はかなり変わります。
2024年4月から「1人1万円以下の飲食費」は交際費から外れた
交際費のルールでもう一つ押さえておきたいのが、2024年4月からの改正です。
1人あたりの飲食代が10,000円以下であれば、その飲食費は「交際費」としてカウントせず、全額損金にできます。以前のルールでは5,000円以下が上限でしたが、倍の1万円まで引き上げられました。
4人での会食で合計4万円(1人あたり1万円)なら、これは交際費として扱わなくてよい計算です。この特例を使うには、以下の記録を残しておく必要があります。
- 飲食した年月日と飲食店の名称・所在地
- 参加者全員の氏名と人数
- 交際費等に該当しない旨の明示
領収書の裏にメモするだけでも対応できます。記録さえきちんと残っていれば認められますので、会食のたびに習慣にしておきましょう。
交際費と「会議費」の使い分けも意識したい
社内の打ち合わせや社員同士の食事は、そもそも「交際費」ではなく「会議費」として処理できます。会議費には上限がなく全額損金です。
取引先との会食であっても、実質的に業務上の打ち合わせを兼ねていた場合、会議費として処理できるケースがあります。ただし、あくまで「実態」が伴っていることが前提です。形式だけ整えても、税務調査で否認されるリスクがあります。
飲食費の処理区分は、「誰と」「何のために」という目的と参加者によって変わります。日々の処理を曖昧にせず、会計担当者と認識を合わせておくことが重要です。
まず「自社の交際費の中身」を整理してみてください
交際費のルールは、知っているかどうかで差がつく分野です。中小企業の800万円特例、1万円以下の飲食の別扱い、会議費との使い分け。この3点を押さえておくだけで、年間の節税効果はじわじわと積み上がります。
決算前に一度、交際費の集計と記録の整備を見直してみてください。「知っていれば防げた損金もれ」は、思いのほか多いものです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。