先日、ある製造業の社長からこんな連絡が来ました。「去年、社員の給料を結構上げたんですけど、それって節税になるって本当ですか?」
結論から言うと、その社長の会社は約200万円の節税ができたはずでした。ところが、顧問税理士への確認が漏れていたため、その年の申告では適用できなかったのです。
知っているか知らないかだけで、年間300万円以上の差がつく節税策があります。今回は2026年時点で中小企業の社長なら必ず押さえておきたい節税3選をお伝えします。
給料を上げると法人税が直接減る「賃上げ促進税制」
最初にご紹介したいのが「賃上げ促進税制」です。名前は聞いたことがあっても、中身まで把握している社長は意外と少ないです。
仕組みはシンプルです。社員への給与を前年比1.5%以上増やすと、その増加額の最大45%を法人税から直接差し引けます。「税額控除」なので、利益から引く損金算入とは効き目が段違いです。
たとえば給与総額を500万円増やした場合、最大で225万円の法人税が減ります。賃上げは社員のモチベーションにもつながりますし、税負担も減らせる一石二鳥の制度です。毎年の給与改定と一緒に、必ずチェックしておきたい制度のひとつです。
1人1万円以下なら交際費の枠に関係なく全額OK「飲食費特例」
次は交際費の話です。「交際費は経費にしにくい」というイメージを持っている社長も多いですが、2024年の税制改正でかなり使いやすくなりました。
以前は「1人あたり5,000円以下」の飲食なら全額経費OKでしたが、これが「1人あたり1万円以下」に拡大されました。1人1万円以内に収まる飲食であれば、交際費の損金不算入ルールとは切り離して、全額を損金に計上できます。
仮に年間100万円の飲食費があり、全額この特例に収まるとしたら、法人税率34%として約34万円の節税になります。日常的な取引先との食事が、少し意識するだけで節税効果に変わるわけです。
ただし1人あたりの金額で判定するため、飲食時の参加人数の記録が必須です。レシートに「参加者名と人数」をメモする習慣をつけるだけで、税務調査でも安心して説明できます。
30万円未満の備品はその年に全額経費「少額減価償却特例」
最後は見落としている社長が特に多い「少額減価償却の特例」です。
通常、30万円以上のパソコンや機械設備は減価償却といって何年かに分けて経費計上しなければなりません。ところが中小企業には特例があり、30万円未満の資産であれば購入した年に全額を経費に落とせます。年間の合計上限は300万円まで。
たとえば25万円のノートPCを4台購入すれば100万円、タブレット、業務用スマートフォン、プリンターなど、30万円未満に収まる備品を積み重ねるとかなりの節税効果になります。
決算前に設備投資を検討している社長は、この上限枠を頭に入れておくと購入タイミングの判断がしやすくなります。適用には青色申告であることなど要件がありますので、具体的な確認は必ず税理士にお願いしてください。
「知っている」だけで何十万円も変わる
この3つの制度に共通しているのは、申請が複雑なわけでも特別な審査があるわけでもなく、「知っているかどうか」で使えるかが決まる点です。
賃上げ促進税制225万円、飲食費特例34万円、少額減価償却の節税効果を合算すれば、年間300万円超という数字は十分ありえます。決して大げさな話ではありません。
決算期が近い方は、今すぐ顧問税理士に「賃上げ促進税制、飲食費の特例、少額減価償却特例を今期適用できるか」と確認してみてください。一本の連絡が、数百万円の差につながることがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。