先日、ある卸売業の社長さんからこんな一言をいただきました。「税制改正って、大企業向けの話が多いですよね。うちには関係ないかな、と思って毎年読み飛ばしてます」

気持ちはわかります。でも、今年はちょっと違います。

2024年度の税制改正には、中小企業のオーナー社長が「今すぐ動ける」制度が3つ含まれています。1つひとつは地味に見えるかもしれませんが、3つ組み合わせると年間150万円以上の税負担差が出るケースもある。「うちには関係ない」で放置するのが、一番もったいないパターンです。

接待にかける1万円が、正面から経費になるようになった

2024年4月から、飲食交際費の損金算入の上限が「1人あたり5,000円」から「1人あたり1万円」に引き上げられました。

5,000円という上限が設けられたのはずいぶん前のこと。物価が上がる中で「1人5,000円以内の店なんて選べない」という声が長年あり、ようやく改正が入りました。

実務上は、これまで「惜しくも5,001円で全額NG」だった会食費が、今後は損金算入できます。ポイントは参加人数の記録です。「1人あたり1万円以下」という要件は変わらないので、領収書に人数を必ずメモしておく習慣をつけてください。4人で44,000円なら1人11,000円でアウト、同じ金額でも5人なら8,800円でOKです。些細なことに見えて、税務調査では意外と厳しく見られる部分です。

給与を上げると法人税が下がる仕組みが、さらに強化された

賃上げ促進税制は、社員の給与を増やすと法人税を直接差し引ける制度です。2024年度の改正でさらに拡充され、控除率の上限が最大45%に引き上げられました。

具体的には、前年と比べて給与総額が増えた場合、その増加分の15〜45%を法人税額から控除できます。たとえば給与を年間200万円増やした場合、最大で90万円が法人税から直接差し引かれる計算です。「所得を減らす」経費処理とは違い、税額そのものが減るので効果が大きい。

ただし、控除率が上がるほど要件も厳しくなります。教育訓練費の増加や、子育て支援・女性活躍推進の認定取得など、追加条件を満たすほど控除率が高くなる仕組みです。「社長の報酬だけ上げた」という場合は対象外になることもあるので、適用前に税理士と要件を確認するのが必須です。

上限は「法人税額の20%まで」ですが、それでも中小企業の規模感では十分インパクトのある数字です。

備品の買い方で、今期の利益がまるごと変わる

中小企業に認められている「少額減価償却資産の特例」をご存知ですか。30万円未満の備品を購入した場合、通常の減価償却(数年に分けて経費計上)をせず、購入した期に全額を経費として計上できる制度です。

28万円のノートパソコンを4台購入したとします。通常なら4年間かけて分割計上ですが、この特例を使えば今期一括で112万円を経費にできます。法人税率30%で計算すると、約34万円の節税です。

年間の合計上限は300万円。パソコン、スマートフォン、カメラ、業務用ソフトウェア、什器類など「30万円未満で買える業務用のもの」を計画的に購入すれば、決算期の利益調整にも使えます。なお、適用には確定申告書への明細書添付が必要なので、「気づいたら使えていた」とはなりません。事前に税理士に確認した上で購入計画を立てるのがベストです。

3つ全部使うと、どれくらい変わる?

試しに数字を並べてみます。

  • 交際費の活用拡大で年間50万円を損金化 → 法人税30%として約15万円の節税
  • 賃上げ促進税制で給与増加額200万円の45%控除 → 最大90万円の法人税直控除
  • 少額減価償却特例で備品を計画購入、50万円追加で即時経費化 → 約15万円の節税

合計すると、120〜150万円以上の差になることは珍しくありません。制度として存在しているものを「知っているかどうか」「動いたかどうか」の差だけで、これだけの金額が変わります。

特に賃上げ促進税制は、「この期中に給与を上げる」という行動が前提です。決算直前に気づいても間に合わない可能性があります。今期の決算がまだなら、顧問税理士に「この3つ、うちは全部使えますか?」と一度確認してみてください。その一問が、数十万円単位で効いてくることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。