先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。
「来月が決算なんだけど、今から何かできることある?」
正直にお伝えすると、この時点でできることはほとんど残っていません。決算月になって慌てて節税策を探す社長は本当に多いのですが、その段階で打てる手はごくわずかなのです。
なぜ「決算月」では遅いのか
節税の多くは、実行するタイミングが決まっています。設備投資も、役員報酬の見直しも、退職金の支給も、決算の直前に思いついて動かせるものではありません。
決算月になってから「利益が出過ぎている」と気づいても、その月にできる対策は限られています。消耗品の前倒し購入くらいでは、数十万円単位の利益は動かせても、数百万円単位の着地は変えられません。
本当に効果のある対策を打つには、決算の3ヶ月前には着地を予測しておく必要があります。これが最低ラインだと考えてください。
3ヶ月前に見ておくべき3つのこと
1. 利益の見込み
まず、今期の利益がどのくらいの着地になりそうかを試算します。売上の進捗と経費の発生ペースから、決算月末時点の利益を予測するのです。
ここで「思ったより利益が出ている」とわかれば、残り3ヶ月の間に手を打つ時間が確保できます。逆に赤字傾向であれば、無理な節税より資金繰りの手当てを優先すべき場面もあります。
2. 設備投資の予定
もともと来期に予定していた設備投資を、今期に前倒しできないか検討します。特別償却や税額控除が使える投資であれば、利益の圧縮と将来の生産性向上を同時に実現できます。
ただし、必要のない投資を節税目的だけで行うのは本末転倒です。あくまで「もともと予定していたものを、タイミングだけ調整する」のが基本です。
3. 役員報酬や退職金の時期
役員報酬は期首から3ヶ月以内に改定しないと、原則として損金算入が認められません。つまり決算の3ヶ月前に気づいても、報酬額そのものはもう動かせないケースがほとんどです。
一方で、役員退職金は支給時期をある程度コントロールできます。退職の予定がある役員がいるなら、どの期に支給するかで税負担が大きく変わることもあります。
節税は一年がかりの経営
こうして並べてみると、節税とは決算月にひねり出す作業ではなく、一年を通じて利益の推移を見ながら経営判断を積み重ねていく作業だとわかります。
毎月の試算表を見て、四半期ごとに着地を見直す。それだけで、決算3ヶ月前の時点で打てる選択肢の数がまったく違ってきます。
慌てて動いた節税は、たいてい効果も中途半端になりがちです。逆に、早めに着地が見えていれば、投資も報酬も退職金も、無理なく計画的に配分できます。
まだ今期の着地を試算していないなら、決算3ヶ月前を待たずに、今のうちに一度数字を確認しておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。