先日、3月決算を控えた製造業の社長から、こんな相談を受けました。「今期は思ったより利益が出てしまって、慌てて対策を探している」と。
決算まで残りわずかというタイミングでも、実は打てる手はまだ残っています。その代表格が、少額減価償却資産の特例です。
30万円未満の資産は、買った期に全部経費にできる
パソコンや工具、事務机といった資産を購入すると、本来は耐用年数に応じて数年かけて少しずつ経費(減価償却費)にしていくのがルールです。
ところがこの特例を使うと、取得価額が30万円未満の資産であれば、購入した期にその全額を一括で損金にできます。
たとえば決算月に25万円のノートパソコンを10台買ったとしましょう。通常なら耐用年数4年で割って少しずつしか経費にできないところを、この特例を使えば250万円をその期の経費として一気に計上できるわけです。
利益が出すぎている期に、必要な設備投資を前倒しするだけで、課税所得を圧縮できる。決算直前でも間に合う数少ない打ち手のひとつだと言えます。
使える条件は2つ、忘れると特例が吹き飛ぶ
ただし、この特例にはいくつか条件があります。まず、対象になるのは中小企業者等に限られ、青色申告をしていることが前提です。白色申告のままでは、この特例そのものが使えません。
もうひとつが金額の上限です。年間300万円までという枠が設けられており、これを超えた分は通常の減価償却に戻ります。決算直前にまとめ買いをする場合は、この上限を必ず確認しておく必要があります。
また「30万円未満」という金額基準の判定は、経理処理を税込にしているか税抜にしているかで、対象になるかならないかが変わってくることがあります。細かい部分ですが、経理方式によって結果が変わる点は覚えておいて損はありません。
節税のための買い物は本末転倒
ここで一つ、強調しておきたいことがあります。この特例はあくまで、もともと必要だった設備投資のタイミングを前倒しできる、という制度です。
節税額を増やしたいがために、本当は不要なパソコンや備品を買い込んでしまっては意味がありません。手元のキャッシュが減り、翌期以降に使う予定だった投資枠を先食いしてしまうだけです。
「来期どうせ買う予定だったものを、今期のうちに買う」という判断ができるときにこそ、この特例は効いてきます。逆に言えば、来期以降の投資計画がないなら、無理に使う必要はありません。
まだ今期中に予定していた設備投資があるなら、決算日までに購入・使用開始まで済ませられるかどうか、経理担当や税理士に確認しておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。