決算月が近づくと、事務用品店やネット通販でまとめ買いをする社長が増えます。「経費を増やして利益を圧縮したい」という気持ちはよくわかりますし、実際にコピー用紙やトナー、文房具を段ボールで買い込む会社を何社も見てきました。

ただ、先日ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「決算前に消耗品を50万円分まとめ買いしたのに、税理士に半分近く否認されそうだと言われた」というのです。話を聞くと、理由は単純でした。買った消耗品のほとんどが期末時点で使われずに倉庫に眠っていたのです。

在庫として残ったものは経費にならない

結論から言うと、決算日にまだ使っていない消耗品は、原則として「貯蔵品」という資産として扱われ、その期の経費にはできません。会社のお金は減っているのに、税務上の利益はほとんど減らないという、いちばん損なパターンです。

これは費用収益対応の原則という、税務の基本的な考え方によるものです。経費として認められるのは、あくまでその期の売上や事業活動に対応して「使ったもの」であって、「買っただけのもの」ではありません。倉庫に積まれたままのコピー用紙は、まだ会社の資産であって費用ではないという理屈です。

例外として認められるケースもある

一方で、毎期ほぼ一定の量を購入し、経常的に使っていく性質の消耗品については、買った期にそのまま経費にしてよいという実務上の扱いがあります。法人税の通達に基づく「重要性の原則」によるもので、事務用品や消耗工具、包装材料などが典型例です。

毎年同じくらいの量を買い、翌期以降も継続的に同じ処理をしているのであれば、多少期末に残りがあっても目くじらを立てられることは少ないというのが実務上の感覚です。逆に言えば、今期だけ急に発注量が跳ね上がっていたら、それだけで税務署の目には不自然に映ります。

分かれ目は「使い切る前提」かどうか

私が相談を受けるときにいつも聞くのは、「その量、来月までに本当に使い切りますか」という一点です。

毎月の消費量が10万円程度の会社が、決算前に3ヶ月分の30万円をまとめ買いするのはまだ理解できます。ですが、いきなり1年分・200万円分を買い込むとなると、話は別です。使い切る前提のない量は、どれだけ「消耗品」という名目でも、税務署からは在庫と見なされるリスクが高くなります。

さらに厄介なのは、まとめ買いした分の経費が仮に認められなかった場合、修正申告や追徴課税という形で、余計な手間とコストがのしかかってくることです。節税のつもりが逆に資金を減らすだけになってしまいます。

駆け込み購入の前にできること

決算対策として消耗品費を使うなら、次の3点だけは確認しておくといいと思います。

  • 過去数期の消耗品費の平均額と比べて、今回の購入額が極端に多くないか
  • 期末までに使い切れる、あるいは通常の使用ペースで数ヶ月以内に消化できる量か
  • 同じ処理を翌期以降も継続する前提になっているか

この3つに自信を持って「はい」と言えないなら、その買い込みは節税ではなく、単なる資金の先出しになっている可能性が高いです。

決算前のまとめ買いは、正しく使えば有効な手段です。ただ、金額の大きさに気を取られて「使い切れる量かどうか」という視点を忘れると、経費にならないうえに現金だけが減るという、いちばん避けたい結果を招きます。今期の駆け込み購入を検討しているなら、発注ボタンを押す前に一度、過去の使用ペースと照らし合わせてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。