先日、ある社長からこんな相談を受けました。「今期は利益が多く出たので、自分にボーナスを出そうと思っているんですが、問題ないですよね?」
気持ちはよくわかります。頑張って出した利益、自分に還元したい。でも役員賞与には落とし穴があって、タイミングと設計を間違えると数十万円単位で損をすることがあります。
役員賞与は「原則、経費にならない」
法人税法では、役員へのボーナス(賞与)は原則として損金(経費)に算入できません。
なぜかというと、役員は会社の利益を見てから報酬額を動かせる立場にあるからです。「今年は利益が出た。じゃあボーナスをたくさん出して課税所得を下げよう」という行為を防ぐために、こういうルールになっています。
150万円の賞与を払っても経費と認められなければ、法人税の課税対象がそのまま150万円分増えます。実効税率が約33%なら、追加で約50万円の税負担が生まれる計算です。ボーナスを出したのに、会社の税金も増える——これが「要件アウト」の怖さです。
毎月同額なら全額経費になる
では、役員報酬を経費にするにはどうすればいいか。
答えは「定期同額給与」という仕組みです。毎月、決まった金額を支払う。これだけで全額損金に算入できます。
たとえば月50万円の役員報酬を毎月きちんと払っていれば、年間600万円が全額経費として認められます。「今月は業績が良かったから80万円にしよう」というような変動は認められませんが、毎月同額であれば問題ありません。シンプルですが、このルールを守るだけで大きく変わります。
一番大事なのは「切り替えの期限」
ここが今日の話の核心です。
定期同額給与に変更できるのは、事業年度の開始から3ヶ月以内というルールがあります。
3月決算の会社(4月〜3月が事業年度)であれば、変更できるのは6月末まで。7月1日になってしまったら、丸1年待たなければなりません。1日でも過ぎれば、もうその期は変えられないんです。
よくあるのが、「8月になってから税理士に相談して、今期から役員報酬を上げたいと言ったら、もう間に合わないと言われた」というパターンです。期限を過ぎてしまえば、どんなに正当な理由があっても手の打ちようがありません。
利益が出てから考えるのでは遅い
役員報酬は「年度が始まる前に設計するもの」です。
期の途中で利益が想定より多く出た、だから今から役員賞与を出そう——という発想は、税務上は認められにくい。冒頭の社長のケースも、相談を受けたのが9月だったため、その期の定期同額変更は間に合いませんでした。
一方で、「事前確定届出給与」という仕組みを使えば、ボーナスを経費化できるケースもあります。こちらは支給金額と時期を事前に税務署へ届け出ておく必要がありますが、あらかじめ計画を立てられる場合には有効な手段です。どちらを使うかも含めて、年度初めに設計しておくのが理想です。
今すぐカレンダーに入れてほしいこと
自社の決算月を確認して、そこから3ヶ月後の末日を「役員報酬変更の締め切り」としてカレンダーに入れておいてください。3月決算なら6月末、9月決算なら12月末、12月決算なら3月末です。
この期限内に顧問税理士と来期の業績見通しを話し合い、役員報酬の水準を決める。それだけで50万円の差が生まれることがあります。節税は「知っていれば使えた」の世界。今期の締め切りをまだ過ぎていないなら、早めに動いてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。