先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。「税理士に言われた通りに役員報酬を設定しているのに、なんか納税額が多い気がして…」

決算書を見せてもらうと、すぐに原因がわかりました。報酬額の設定が、最適ラインからずれていたのです。金額にして年間250万円ほどの差。「もったいない」という言葉しか出てきませんでした。

役員報酬は、設定を間違えると本当に大きな損失になります。しかも怖いのは、間違えていても気づきにくいこと。今回は、よくある3つのミスパターンをお伝えします。

3位:報酬を高く設定しすぎている

「法人税を減らしたいから、できるだけ役員報酬を多くしよう」という発想は、一見合理的に見えます。役員報酬は法人の損金(経費)になるので、報酬を増やせば法人税は確かに減ります。

ところが、月100万円を超えたあたりから話が変わってきます。所得税の税率が上がるだけでなく、社会保険料も同時に跳ね上がる。報酬が増えるほど、個人側の負担が雪だるま式に膨らんでいくのです。

たとえば月150万円の役員報酬を設定した場合、所得税・住民税・社会保険料を合計すると、手取り額は思ったほど増えません。法人税は減っても個人の税負担が増えて、グループ全体のキャッシュが逆に減っている、ということが起きます。

「法人税を減らす」という目標だけを見ていると、こういう落とし穴にはまりやすいです。

2位:報酬を低く設定しすぎている

逆のパターンも同じくらい危険です。「法人に利益を残しておきたい」という理由で、役員報酬をあえて低く設定する社長もいます。

しかし、法人に利益が残れば、その分だけ法人税がかかります。法人税の実効税率は、課税所得が800万円を超えると約34%まで跳ね上がります。1,000万円の利益が出たとして、800万円超の200万円に34%がかかれば、68万円の税金が消えていきます。

「手元に残しておけばいつか使える」と思っていても、税金として出ていく分は戻ってきません。法人に利益を積み上げることが、必ずしも有利とは限らないのです。

役員報酬を低く設定しすぎると、この「法人税の高い部分」をまともに食らってしまいます。

1位:感覚で設定している(これが最大のミス)

1位は、「なんとなく」で設定しているケースです。「去年と同じでいいか」「キリよく月80万円にしよう」という決め方をしている社長は、かなり多いです。

問題は、所得税・社会保険と法人税には損益分岐点があること。この分岐点を計算せずに設定すると、最適な額との差が年間300万円以上になることもあります。

たとえば、損益分岐点が月90万円だとして、感覚で月80万円に設定していたとします。たった月10万円の違いでも、年間120万円。それが税負担の最適化という観点からずれていれば、5年で600万円、10年で1,200万円の差になって積み上がっていきます。

しかも役員報酬は、原則として期中に変更できません。毎年の決算前に「今期の利益はいくらになりそうか」を予測して、最適額を計算してから設定する必要があります。

損益分岐点の計算は毎年やること

では、最適な役員報酬はどうやって計算するのか。ざっくり言えば、「個人側の税負担と社会保険料の合計」と「法人税の節税効果」を比較して、トータルコストが最小になるポイントを探す作業です。

これは収入や家族構成、社会保険の加入状況によっても変わりますし、法人の課税所得がいくらになるかの予測も必要です。毎年の計算が欠かせない作業なのです。

「毎年きちんと計算してもらっている」という社長は、顧問税理士に感謝してください。実はこれ、やっていない事務所も少なくありません。

「役員報酬は設定したまま何年も変えていない」「顧問税理士から報酬の見直し提案がここ数年ない」という場合は、一度確認してみる価値があります。年300万円の差がどこかに眠っているかもしれません。

今期の決算が近いなら、今すぐ試算してもらうことをおすすめします。報酬の変更は事業年度開始から3か月以内が原則。タイミングを逃すと、また1年待つことになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。