先日、埼玉で建設会社を経営しているAさんから、こんな相談を受けました。
「毎月10万円の家賃を、ずっと個人のお金から払ってきたんですよ。何か節税できる方法、ありますか?」
話を聞くと、独立してからもう10年以上、一度も見直さずに個人負担で家賃を払い続けていたといいます。思わず「もっと早く気づいていれば」とつぶやいてしまいました。
家賃を「会社の経費」にする仕組みとは
結論から言います。法人が社長の自宅を借り上げて「社宅」として提供する仕組みを使えば、家賃を丸ごと会社の経費にできます。
やることはシンプルです。今まで社長個人が大家さんと結んでいた賃貸契約を、法人名義に切り替えるだけ。毎月の家賃を会社が支払い、それを法人の経費として計上します。
社長は、国税庁が定めた「賃貸料相当額」を毎月会社に納めます。この金額は物件ごとに計算が異なりますが、一般的なマンションであれば月1万5千円〜2万円程度に収まることが多いです。
Aさんの場合、年120万円が丸ごと経費になった
Aさんのケースで、具体的に数字を見てみましょう。
毎月の家賃は10万円。年間では120万円になります。社宅制度を使うと、この120万円が法人の経費として計上されます。Aさんが会社に払う賃貸料相当額は月2万円(年24万円)でした。
法人税の実効税率を約30%として計算すると、節税効果は年間約36万円です。10年以上続けていた個人負担が、一つの手続きで解消された形です。
さらに、社長個人の家計から見ると、家賃の手出しが月10万円から2万円に下がります。キャッシュフローの感覚も、大きく変わってきます。
なぜ合法で節税になるのか
「そんなに都合のいい話があるの?」と思う方もいるかもしれません。仕組みを少し整理しておきましょう。
個人が家賃を払っても、それは生活費なので経費になりません。ところが、法人が社宅として物件を借り、従業員(社長も含む)に貸す場合は、法人の経費として処理できます。これは税法の範囲内で認められた節税手法で、古くから多くの中小企業が活用しています。
社長から受け取る賃貸料相当額は法人の収入になりますが、支払う家賃のほうがはるかに大きい。この差分が法人の利益を圧縮し、税負担を下げてくれます。
「賃貸料相当額」の計算を間違えると危ない
ここで、必ず押さえておきたい注意点があります。
社長が会社に支払う賃貸料相当額は、国税庁の通達に基づいた計算式で算出する必要があります。固定資産税評価額や物件の床面積などを使った計算で、物件ごとに金額が変わります。
この金額が極端に低すぎると、差額が「給与」とみなされ、所得税・社会保険料の課税対象になるリスクがあります。また、高級マンションや一戸建てで「豪華社宅」と判定されると、別の計算式が適用されることもあります。
計算の正確さが節税の肝なので、ここは必ず税理士に依頼してください。根拠のある数字を書面で残しておくことで、税務調査があっても安心して対応できます。
引越し不要、「今の家」のまま節税できる
社宅制度の最大のメリットは、引越しも不動産購入も不要なことです。今住んでいる賃貸物件の契約名義を変えるだけで効果が出ます。
大きな初期投資も複雑なスキームも不要。手続きの手間はありますが、それに対する節税効果は相当大きいと言えます。月10万円の家賃を個人で払い続けているなら、毎月約3万円の節税機会を逃し続けている計算です。
まだ社宅制度を使っていないなら、今期の決算前に一度、税理士に相談してみてください。大家さんの承諾が必要だったり、契約変更に時間がかかったりするケースもあるので、余裕をもって早めに動くのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。