先日、ある社長とランチをしていて、こんな話になりました。
「うちの税理士、先生は良い人なんだけど、何年も変わらないんだよね。毎年800万以上持っていかれてる気がして」
年商3億円の食品メーカーを経営するAさん(50代)の言葉です。売上は順調に伸びているのに、手元に残るお金が増えない感覚があると言います。
顧問税理士を変えたら、何が起きたか
Aさんはその後、知人の紹介で別の税理士に相談しました。最初の面談はたった1時間。でもそこで「えっ、それって法人で落とせますよ」という言葉を何度も聞くことになったそうです。
指摘されたのは、大きく3つのポイントでした。
ひとつ目は、社長自身が立て替えていた会議の飲食代です。部下との打ち合わせや取引先との食事代を、なんとなく個人のカードで払い続けていたそうです。1回ずつは数千円でも、年間にすると相当な金額になっていました。
ふたつ目は、出張費の精算ルール。領収書があるものだけ精算していたため、交通費の端数や日当などは「まあいいか」と個人負担にしていたのです。
そして最大のポイントが、自宅兼オフィスの家賃按分。Aさんは自宅の一部を仕事部屋として使っており、毎月それなりの家賃を払っていましたが、その分を一切法人に請求していなかったのです。
「個人で払う」か「会社経由にする」か、それだけで300万円変わる
新しい税理士と一緒に支出を棚卸しした結果、法人経費に計上し直せる金額が年間約900万円あることがわかりました。
Aさんは驚いた様子でこう言っていました。「払うお金の総額は変わらないのに、それが経費かどうかだけで税金がここまで変わるなんて、思ってもみなかった」
法人の実効税率は約34%です。900万円を法人経費として計上できれば、課税所得がその分下がり、節税額は年間約300万円になります。10年続ければ3,000万円の差。同じお金を払っているのに、その差はじわじわ積み重なっていきます。
あなたの会社にも、見落としている経費はないか
Aさんのケースで重要なのは、「脱法的なことは何もしていない」という点です。
法人の業務に使っているなら、それは当然、法人の経費として計上できます。ところが「税理士に言われたもの」だけを経費にしていると、かなりの金額が個人のお財布から出ていくことになります。
よくある見落としをいくつか挙げると:
- 社長個人のスマホ代(業務で使っているなら一定割合を法人負担にできる)
- 自宅の通信費や光熱費(在宅作業のスペースに対応する部分)
- 書籍・セミナー・研修費(業務に関連するもの)
- 法人名義にしていない車両費(使用実態次第では法人計上可能)
- 接待費の立て替え(都度精算せず個人で吸収しているケース)
これらは一つひとつは小さくても、積み重なると年間数百万円規模になることがあります。Aさんの場合、900万円というのも年商3億円の会社での話です。規模感としては、決して遠い話ではありません。
まず「支出の棚卸し」だけやってみる
Aさんが実行したことはシンプルです。直近1年間の支出を洗い出し、「これは法人の業務のためにかかったお金か?」という視点で一つひとつ確認した。それだけです。
特別なテクニックがあったわけではありません。「確認する」という作業を一度ちゃんとやっただけ。でもそれが年間300万円の差になりました。
今の顧問税理士に「私の支出を一度全部確認してもらえますか?」と聞いて「特に問題ないと思いますよ」で終わるようなら、セカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。税理士が変わると見えるものが変わる、というのはAさんの話が教えてくれている通りです。
経費の「内容」を変えることに目が向きがちですが、実は「誰が払っているか」という視点の棚卸しが大きな節税につながることがあります。今期の決算が近いなら、まず1枚の紙に「個人で払っているもの」を書き出すところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。