先日、年商3億円ほどの建設業の社長からこんな言葉が出ました。「うちは毎年ちゃんと申告してるし、税務調査なんて関係ないですよね?」

正直に言います。その「関係ない」という感覚こそが、税務署に狙われやすい人の典型だったりします。今日はちょっと耳の痛い話をしますね。

税務署は「異常値」をコンピューターで探している

調査官が一件一件の申告書を手作業で読んでいる、そんなイメージを持っている社長は多いですよね。でも実態はかなり違います。

今の税務署は申告書のデータをシステムで自動分析し、業種ごとの平均利益率と比較して乖離が大きい会社を自動的にリストアップしています。人の目ではなく、コンピューターが「この会社はおかしい」と判断するわけです。

つまり、調査対象に選ばれるかどうかは、担当者の「勘」ではなく、データとの比較で決まっています。これを知っているかどうかで、決算前の動き方が変わってきます。

狙われやすい3つのパターン

では具体的に、どんな会社がリストアップされやすいのか。大きく3つのパターンがあります。

① 売上が急増または急減した年

前年比で売上が大きく変動した年は、システムが「異常」とフラグを立てやすくなります。業績が良くても悪くても、急変した年は要注意です。増減の理由を説明できるよう、契約書・請求書・入金記録は整然と保管しておきましょう。

② 役員報酬を突然変えた年

役員報酬は原則として年1回しか変更できません。それを年の途中で変えていたり、前年から大幅に増減させていたりすると、「利益調整ではないか」と疑われます。特に決算直前の報酬変更は厳しく見られるポイントです。

③ 現金売上が多い業種

飲食、建設、不動産、美容系などの業種は、現金取引が多い分だけ「売上除外」のリスクを疑われやすい構造になっています。実際、こうした業種への調査頻度は他と比べてかなり高めです。「うちは正直にやっている」という事実だけでは不十分で、それを証明できる帳簿や記録の整備が問われます。

調査が来たときのリアルなダメージ

「ちゃんとやってるから大丈夫」と思いたい気持ちはよくわかります。でも、調査が入ったときの影響をもう少し具体的に伝えておきます。

税務調査が入ると、原則として過去5年分の帳簿が対象になります。もし「隠蔽」や「仮装」があったと判断されれば、さらに7年前まで遡ることもあります。

そして最も怖いのが重加算税です。故意に所得を隠したと認定された場合、本来の税金に35%が上乗せされます。仮に追加で500万円の税額が認定されれば、さらに175万円が加算される計算です。ペナルティの重さを考えると、事前の予防に投資する価値は十分にあります。

「説明できる会社」が最も強い

逆に、税務調査が来ても問題になりにくい会社には共通点があります。利益率が業種平均に近い、役員報酬を変更した場合には理由が明確に説明できる、現金売上にはレジ記録や領収書が必ず対応している——そういった「いつ見せても説明できる会社」です。

調査対策とは何か特別なことをするというより、「いつ見せても恥ずかしくない帳簿を作り続ける」という意識が基本です。当たり前に聞こえますが、これができていない会社が案外多いのも現実です。

今期できる一手

もし自分の会社が3つのパターンのどれかに当てはまると感じたなら、今期中に顧問税理士と「調査リスクの観点から帳簿を一度見直す」時間を取っておくことをおすすめします。

申告書を出してから「問題があった」と気づいても、打てる手は限られます。申告前に確認する習慣が、長期的な経営の安心感につながります。税務調査は準備した会社にとっては「特に何もなかった」で終わるもの。その準備を今すぐ始めておきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。