先月、ある製造業の社長からこんな連絡が来ました。「決算まであと10日なんですが、今から何かできることはありますか?」
話を聞くと、今期の利益が想定より1000万円ほど上振れていて、このまま申告すると法人税がかなり跳ね上がる状況でした。焦るのも当然です。
でも正直に言うと、こう思いました。「もっと早く動いていれば、もっと選択肢があったのに」と。決算前に合法的に使える経費は、実は意外と多いんです。知っているか知らないかだけで、年間100万円単位の差がついてしまうことは珍しくありません。
今回は、特に見落とされがちな3つのポイントをご紹介します。
3位:30万円未満の備品は今月買うだけで今期の節税になる
中小企業には「少額減価償却の特例」という制度があります。通常、一定金額以上の備品は複数年かけて費用化(減価償却)しますが、この特例を使えば30万円未満のものは購入した年に全額を経費にできます。
しかも、年間300万円まで適用可能です。3月決算の会社なら、今月中に業務用PCやタブレット、オフィス家具などを購入すれば、それが今期の税金を直接減らします。「まとめて買う」という発想が大事です。
ただし適用できるのは「中小企業者等」に限られます。自社が該当するか、また適用期限の延長状況も毎年確認が必要ですので、顧問税理士に一度確かめておきましょう。
2位:飲食費のルールが変わった。知らないと毎回5000円損している
「接待交際費って、使いすぎると損金算入に制限があるんじゃないか」と気にしている社長は多いです。でも、2024年4月に重要なルール変更がありました。
1人あたり1万円以下の飲食であれば、接待交際費の枠を使わずに全額経費として計上できるようになったんです。以前は1人5000円以下が基準でしたが、倍の1万円以下に引き上げられました。
ランチミーティングや取引先との軽い食事なら、1万円以内に収まることがほとんどですよね。この変更はかなり使いやすいものです。
ただし、記録の要件は厳格です。飲食の年月日・参加者の氏名と人数・飲食店の名称と所在地・支払金額・目的と参加者との関係、という5項目を残す必要があります。「なんとなく一緒に食べた」では税務調査で否認されるリスクがあります。その場でレシートを撮影し、メモを残す習慣をつけておくと安心です。
1位:役員社宅は「知っている」だけでは意味がない
節税の話になると、私が真っ先に確認するのがこれです。役員社宅を活用すると、毎月の家賃の大部分を会社の経費にできます。
仕組みはシンプルです。会社が物件を借りて、役員に転貸する。役員が個人で支払う賃料は、国税庁の計算式で算出した「賃料相当額」だけ。実際の家賃の10〜20%程度が目安です。残りはすべて会社の経費になります。
たとえば月20万円の物件なら、個人負担は月3〜4万円程度。差額の16〜17万円が会社の経費に計上でき、年間で200万円前後の節税効果になるケースもあります。
「知ってはいるんですよ」という社長が多いのですが、問題は「知っていても動いていない」こと。賃貸契約の更新タイミングや、引っ越しのタイミングが導入のチャンスです。すでに自宅を借りている場合でも、会社名義への切り替えで対応できることがあります。
今回ご紹介した3つ以外にも、旅費規程の整備・出張手当の活用・中退共への加入など、決算前に検討できる手はまだあります。
ただ、どの手法も「今期に間に合うか」「自社の状況に合っているか」の見極めが大事です。決算直前に急いで動くと、要件を満たせず否認されるリスクもあります。
役員社宅にまだ手をつけていないなら、まずそこから顧問税理士に相談してみてください。「今期に使える節税策はまだありますか?」というその一言が、数百万円の差を生むことがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。