先週、顧問先の社長からこんな連絡がきました。「決算が終わったんですけど、なんか利益が出すぎている気がして……」。売上も順調、特別な支出もないのに、税金が予想よりずっと多くなっている。そういう社長ほど、実は「見落とし経費」が積み重なっている傾向にあります。

経費の計上漏れは、意識していないとなかなか気づけません。今回は、中小企業の社長が損しがちな盲点を5つ、具体的な金額感とともにご紹介します。うまく活用すれば、年間100万円以上の差が出ることもあります。

5位・4位:「勉強代」を全額経費にできていますか

意外と見落とされているのが、書籍・新聞代や研修費の計上漏れです。

経営者が購入したビジネス書、業界専門誌、日経新聞の電子版……これらは「仕事に関連する情報収集のための費用」として、全額経費にできます。セミナー参加費やオンライン講座の受講料も同様です。

「個人で買っているから経費じゃない」と思っている社長が多いのですが、会社のカードで購入して帳簿に載せれば立派な経費です。月に5冊ビジネス書を読む社長なら、それだけで年間12万円前後。外部セミナーの参加費も合わせると、年20〜30万円の計上漏れになっているケースが珍しくありません。

領収書をもらう習慣と、「これは仕事のため」という意識があれば、明日からでも変えられる項目です。

3位:交際費のルールが2024年に変わりました

接待交際費は長らく「経費にしにくい」イメージがありましたが、2024年4月から大きく変わりました。

飲食費のうち、1人あたり1万円以下であれば全額損金算入できるようになったのです。改正前は5,000円以下が基準でしたが、倍に引き上げられました。

たとえば、社長と取引先の2人でランチをして9,600円(1人4,800円)だったとすれば、全額経費になります。条件は、領収書に参加者の氏名と会社名を記載しておくことだけです。「交際費はどうせ制限があるから……」と思って計上していなかった社長は、ぜひ今一度ルールを確認してみてください。

2位:30万円未満の備品は「その年に全額経費化」できる

パソコン、スマホ、カメラ、オフィス家具……。30万円未満の備品を購入したとき、「固定資産として何年かに分けて経費にするもの」と思っていませんか?

実は、中小企業には「少額減価償却資産の特例」という制度があります。取得価額30万円未満の備品であれば、購入した年に全額一括で経費にできる制度です。通常なら3〜5年かけて経費化するところ、その年度の利益と相殺できるわけです。

決算前に必要な備品があるなら、このタイミングで購入するのが合理的です。ただし、年間の合計上限は300万円(1事業年度)なので、大きな設備投資とは別枠で考えておきましょう。

1位:役員社宅は「最強の節税スキーム」

これが一番インパクトの大きい項目です。

役員社宅とは、法人名義で物件を借り、社長が法人に賃貸料相当額を支払うという仕組みです。難しく聞こえますが、やっていることはシンプルです。社長が個人で家賃20万円の部屋に住んでいた場合、法人で同じ部屋を借りて、社長は計算式で算出した「賃貸料相当額」(多くの場合、実際の家賃の10〜20%程度)だけを会社に支払う、という形です。

残りの80〜90%は法人の経費になります。年間240万円の家賃なら、200万円超が法人経費になる計算です。実効税率を約30%とすれば、60万円以上の節税効果が生まれます。

社宅の賃貸料相当額は国税庁が定めた算式に従う必要があり、物件の床面積や固定資産税評価額によって金額が決まります。「全部タダにできる」わけではありませんが、合法的に大きな節税ができる手法として、活用している社長は着実に増えています。まだ個人名義で家賃を払っているなら、一度税理士に試算をお願いしてみる価値は十分あります。

「知らなかった」を減らすことが節税の第一歩

経費の見直しは、リスクを取らずにできる節税の基本です。今回ご紹介した5項目をすべて取り込めれば、年間100万円を超える差も十分ありえます。

特に役員社宅は、住まいの選択とも絡む話なので、早めに動くほど得です。次の決算に向けて、まず「書籍代と備品の領収書管理」あたりから始めてみるのがおすすめです。小さな積み重ねが、じわじわと手元に残るお金を増やしていきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。