先月、こんな相談が届きました。
「今期は利益が3,000万円近く出そうで、このままいくと税金が1,000万円を超えるかもしれないんですが、もう間に合わないですよね?」
聞いてみると、決算まであと3週間。経費の積み増しには少し遅いタイミングでしたが、まだ使える手は残っていました。それが、決算賞与です。
法人税を200万円減らせる仕組み
決算賞与とは、決算期末前に従業員全員に対して支給額を通知し、翌月以内に実際に支払う賞与のことです。
正しく要件を満たせば、支払った金額の全額が「損金」として計上できます。損金とは、法人税の計算上、利益から差し引けるもの。これが増えるほど、会社の税負担は下がります。
たとえば、実効税率が34%の会社が600万円の決算賞与を支給した場合、600万円 × 34% = 約204万円の法人税が減少します。従業員に600万円を分配しながら、税負担も200万円以上減らせる。従業員のモチベーションも上がり、まさに一石二鳥の手法です。
要件は「厳格」です
ここで重要なのが、この節税には守るべき要件があることです。一つでも外すと、支払った賞与の全額が損金として認められなくなります。払った賞与は従業員の手に渡っているのに、税務上は経費にならない、という最悪の結果です。
要件はシンプルに2点。ただし、どちらも妥協できません。
① 決算日までに、全員に支給額を書面で通知すること
口頭での通知はNGです。各従業員に対して「あなたの賞与は○○万円です」と書面で明示する必要があります。全社員に同額でも、個人別に異なる金額でも構いませんが、誰がいくらもらうかを決算日前に確定させておかなければなりません。
② 通知した翌月以内に、実際に支払うこと
通知から1ヶ月以内に入金されていることが必要です。通知と支払いの時間差を短く保つことが求められており、「来月に通知して、再来月に払う」では要件を満たしません。
よくある失敗パターン
税務調査でよく問題になるのが「全員への通知漏れ」です。
社員5名の会社で4名に通知し、1名だけ通知が漏れていた場合、その1名分だけでなく、賞与全額が否認されるリスクがあります。「全員への通知」とは、例外なく全員です。パート・アルバイトを含む全従業員が対象になるケースも多いため、事前に範囲を確認しておく必要があります。
もう一つよくあるのが「支払日のズレ」です。月末締めで翌月末に振り込む運用の会社が、通知日と支払期限の計算を誤り、期限を1日超えてしまった、というケースは珍しくありません。1日のズレで200万円の節税効果が消えるのは、シンプルに痛い話です。
節税の前に確認したいこと
決算賞与は節税ツールである前に、従業員へのインセンティブです。「今期は会社として頑張れた」というメッセージとして支給するのが本来の姿で、業績連動の報酬設計の中に組み込む形が長続きします。
キャッシュフローの観点も忘れないでください。節税で200万円得しても、賞与支給で600万円のキャッシュが出ていきます。手元の運転資金に余裕があるかどうかを確認してから実行することが大切です。
決算まで1ヶ月を切ったら
今期の利益が見えてきたら、まず税理士に「決算賞与を使える余地があるか」を確認してみてください。支給額の設計、通知書類の準備、支払いスケジュールの確認──これらを整えるには、最低でも1〜2週間のリードタイムが必要です。「決算日の前日に気づいた」では手遅れになります。
毎年この時期に一度、顧問税理士と「今期の着地見込みと打てる手」を棚卸しする習慣を持つだけで、見逃す節税は大幅に減ります。決算賞与は、その中でも特にインパクトが大きく、従業員にも喜ばれる手法の一つです。今期の決算、まだ間に合うタイミングなら、ぜひ一度試算してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。