先日、製造業を営む社長からこんな連絡が来ました。

「今期、思ったより利益が出てしまって。決算まであと2週間しかないんだけど、何かできることある?」

こういう相談、決算前になると本当によくあります。そしてこのとき、多くの社長がまず頭に浮かべるのが「決算賞与」です。

でも正直に言います。決算賞与は、やり方を一つでも間違えると全額否認されます。 数百万円の賞与を出したのに、税務署から「経費として認めません」と言われたら、目も当てられません。

今回は、決算賞与を確実に損金として処理するための3つの条件を、できるだけわかりやすく整理してみます。


決算賞与が「経費」になるための3つの条件

税法上、決算賞与を当期の損金(経費)として処理するには、3つの要件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると、翌期の経費扱いになるか、最悪の場合は否認されます。

① 決算日までに、支給を受ける全員に支給額を通知すること

まず、決算日(期末日)の時点で「誰に、いくら払うか」が確定していなければなりません。しかも「全員」への通知が必要です。一部の社員だけに通知してもNGです。

この通知は口頭では危険です。書面か、少なくともメールなど記録が残る形で行いましょう。「言った言わない」の話になると、税務調査で非常に不利になります。

② 通知から1ヶ月以内に、実際に支払うこと

通知しただけでは足りません。期末日から1ヶ月以内に、実際に振り込みや手渡しで支給を完了させる必要があります。

たとえば3月決算の会社なら、4月末日までに全員への支払いを終える必要があります。「来月末に払う予定」では遅い場合もあるので、スケジュール管理が肝になります。

③ その期の損金として会計処理すること

上記2つを満たしたうえで、その賞与を当期の損金として正しく処理する必要があります。翌期に計上してしまうと、要件を満たしていても節税効果が一期ずれてしまいます。

これは会計ソフトの入力ミスや、税理士との連携不足で起きやすいミスです。決算処理の段階で必ず確認しましょう。


「300万円の賞与」で法人税が90万円減る、という話

少し具体的な数字で考えてみましょう。

今期の利益が1,000万円出ているとします。法人税率を約30%とすると、そのまま申告すれば300万円の税負担です。

ここで要件を満たした決算賞与を300万円支給すると、課税対象の利益が700万円に圧縮されます。税負担は210万円になるので、差額90万円が手元に残る計算になります。

300万円の賞与を払って、90万円の税金が減る。社員にも還元できて、節税にもなる。これが決算賞与の本質的なメリットです。

ただし、これはあくまで「要件を満たした場合」の話です。通知が期末日を1日でも過ぎていたり、支払いが1ヶ月を超えていたりすると、この90万円はそのまま税金として消えます。


よくある失敗パターン:「社長だけ賞与」は危ない

中小企業の決算賞与で特に注意してほしいのが、「役員への賞与」との混同です。

決算賞与として損金処理できるのは、基本的に従業員(使用人)への賞与です。役員に対する臨時の賞与は「事前確定届出給与」という別の手続きが必要で、要件もまったく異なります。

「社長にも賞与を出して節税したい」という場合は、決算賞与とは別の話になりますので、必ず事前に税理士に相談してください。この混同が、税務調査で指摘される代表的な事例の一つです。

また、「今期だけ特定の社員に異様に高い賞与」も目を引きやすいです。合理的な支給基準を設けておくと、税務調査でも説明しやすくなります。


動いていい「タイムライン」を頭に入れておく

決算賞与は「決算が近づいてから慌てて動く」ものではなく、決算日から逆算して準備するものです。

決算日の直前に利益を確認し、支給額を決め、全員に通知する。これを決算日当日までに終わらせて、翌月末までに振り込みを完了させる。このタイムラインさえ守れれば、要件は満たせます。

逆に言えば、決算日を1日でも過ぎてから「やっぱり賞与を出したい」と思っても、その期の損金には算入できません。「気づいた時点で動けるか」が、節税できるかどうかの分かれ目です。


もし今期の決算が近づいていて、まだ決算賞与の準備をしていないなら、今すぐ試算表を確認して利益の着地点を把握することをおすすめします。

「利益が出そう」とわかった段階で顧問税理士に連絡を入れ、支給額と通知のスケジュールを一緒に組んでもらう。それだけで、数十万〜数百万円の節税が現実的になります。

決算賞与は難しい節税策ではありません。ただ、タイミングと手順だけは絶対に守ること。それが全てです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。