決算の3日前に、税理士から一本の電話がかかってきたとしたら——あなたはどう感じますか?

ある製造業の田中社長(仮名)は、まさにそんな経験をしました。「未払費用、ちゃんと確認しましたか?」という顧問税理士の一言の意味がよくわからず、「大丈夫です」と答えてそのまま申告を終えた田中社長。後から気づいたのは、約50万円分の経費を計上し忘れていたという厳しい現実でした。

今日はこの話を教訓に、決算前に必ず押さえておきたい「未払費用の計上」について、できるだけわかりやすくお伝えします。

50万円が消えたのはなぜか

田中社長が見落としていたのは、「決算日をまたいだ費用」の処理でした。たとえば3月決算の会社であれば、3月分の社員給与・外注費・顧問料などは、実際の支払いが4月になるとしても、サービスを受けたのは3月中です。つまり、3月の経費として計上できるのです。

これが「未払費用」と呼ばれる処理です。決算日までにすでにサービスや労働の提供を受けているにもかかわらず、まだ支払っていない費用を、きちんと当期の経費に落とすという考え方です。

田中社長の場合、3月分の外注費や顧問料など複数の費用を翌月払いのまま処理し忘れた結果、約50万円が経費として計上されずに申告を終えてしまいました。税率が約23%とすると、単純計算でおよそ11万5千円の税金を余分に払ったことになります。

100万円の計上で23万円の節税になる

未払費用の計上がなぜ節税につながるのか、もう少し具体的に見てみましょう。

法人税の実効税率はおおよそ23%前後です(規模や所在地によって異なります)。100万円の費用を当期に計上できれば、課税所得が100万円下がり、約23万円の税負担が軽くなります。これは「節税」ではなく、正確には「本来計上すべき経費をきちんと拾う」という作業ですが、やらなければ確実に損をします。

「うちはちゃんとやっているはず」と思っている社長も、一度立ち止まって確認してみてください。意外と見落としているケースは多いです。

決算前にチェックしたい未払費用の代表例

田中社長が翌期から実践しているのは、決算月に「未払費用チェックリスト」を作ることです。具体的に確認すべき項目としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 社員給与・残業代:末締め翌月払いの場合、決算月の給与は未払費用になる
  • 外注費・業務委託費:請求書の到着が翌月でも、サービスを受けた月の経費に計上できる
  • 顧問料(税理士・社労士など):月次顧問料が翌月請求の場合も同様
  • 地代家賃:翌月分を当月末に支払う契約か、翌月払いかをチェック
  • 通信費・水道光熱費:後払い精算型のものは特に注意が必要

箇条書きにしてみると「なんだ、こんなこと」と思うかもしれませんが、決算期の慌ただしい時期に、これら全部を漏れなく確認するのは意外に難しいものです。だからこそ、チェックリストという仕組みが役立ちます。

税理士任せでは拾いきれない理由

「税理士が何とかしてくれるんじゃないの?」という声もよく聞きます。でも実際には、外注費の支払いサイクルや、業務委託先との契約内容を一番よく知っているのは社長自身や経理担当者です。

税理士は試算表や請求書をもとに処理しますが、「3月末にサービスは終わったけど請求書は4月に来る予定の案件がある」といった情報は、社内から共有しないと拾えません。つまり、未払費用の計上は、税理士と社内が連携してはじめてしっかり機能するものです。

田中社長が失敗したのも、「言わなくても税理士がやってくれる」という思い込みが一因でした。

決算月にやっておくべきアクション

今期の決算前に、ぜひ以下の流れで動いてみてください。

まず、顧問税理士に「未払費用として計上できるものを一緒に洗い出したい」と伝えることです。自分から議題として上げるだけで、税理士の動き方が変わります。

次に、社内の経理担当者(または自分自身)に、決算月の1〜2週間前を目安にすべての支払いサイクルを棚卸しするよう指示してください。「翌月払いになっているものはないか?」という視点で一覧を作るだけでも、見落としがグッと減ります。

そして、来期以降のために「未払費用チェックリスト」を社内フォーマットとして残しておくことを強くおすすめします。一度作れば、毎年使い回せます。

あなたの会社にも「眠っている経費」がある

50万円という金額は、業種や規模によって変わります。でも「うちは規模が小さいから関係ない」と思わないでほしいのです。年商1億円未満の中小企業でも、未払費用の計上漏れで数十万円単位の税金を余分に払っているケースは珍しくありません。

決算は年に一度しか来ません。その機会を最大限に活かすかどうかで、手元に残るお金が変わってきます。

まだ「未払費用チェックリスト」を作っていないなら、今期の決算前に顧問税理士と一緒に整備しておくことを強くおすすめします。今すぐできる、一番シンプルな決算対策のひとつです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。