先日、飲食チェーンを経営する社長からこんな連絡が入りました。
「決算が終わってから税理士に指摘されたんですが、未払いの残業代を計上し忘れて、数十万円余分に税金を払ってしまったみたいで……」
話を聞くと、決算月に支払っていなかった費用をそのまま翌期に繰り越してしまっていたとのこと。じつはこれ、珍しい話ではありません。決算前の「一手間」を知っているか知らないかで、納税額が100万円単位で変わることがあります。
今回は、決算前に必ず見直してほしい「未払費用」の計上ポイントを3つ、順番にお伝えします。
残業代の締め日ズレ、放置していませんか?
多くの会社では、給与の締め日と決算日が一致していません。たとえば月末決算なのに給与の締め日が20日という会社では、21日〜31日分の残業代が翌月払いになります。
この「締め日後から決算日までの未払残業代」は、まだ支払っていなくても今期の経費として計上できます。従業員が10人いれば、一人あたり数万円の未払残業代でも合計すると数十万円規模になることも珍しくありません。
「支払っていないのに経費になるの?」と驚かれる社長も多いのですが、発生主義という会計の原則に基づけば、費用はサービスを受けた期に計上するのが正しい処理です。決算時に集計して「未払費用」として計上するのは、むしろ正確な経理といえます。
毎月払っている固定費、決算月分は計上できているか
顧問税理士への報酬、社労士の顧問料、毎月発注しているデザイナーや外注先への費用——こうした固定の支払いで、決算月分がまだ請求書ベースで未払いになっているケースがあります。
これも残業代と同様、サービスを受けた月が今期中であれば、支払いが翌期になっていても今期の経費として計上できます。月額50万円の外注費が未計上になっていたら、それだけで法人税の課税対象が50万円増えてしまう計算です。
「うちは払ってから経費にする主義だから」という社長もいますが、計上漏れは税務上の問題というより、利益を正しく把握できていないという経営上の問題でもあります。決算前に一度、固定費の支払いサイクルを確認してみてください。
従業員賞与の未払計上——これを知らないと数百万円の差が出る
ここが今回、一番お伝えしたいポイントです。
役員報酬は原則として、期中に確定した金額しか経費になりません(事前確定届出給与など一部例外あり)。しかし従業員への賞与については、特定の要件を満たせば「まだ払っていなくても」今期の経費にすることができます。
その要件というのが、①決算日までに支給額を各従業員に通知していること、②決算日から1ヶ月以内に実際に支払うこと、の2点です(法人税法施行令134条の規定によるもの)。
たとえば1人あたり30万円の賞与を10人に支給するなら、300万円が今期の損金に算入されます。これが計上できるかどうかで、法人税の負担は数十万〜100万円単位で変わります。
注意点として、「通知」は口頭ではなく書面で行い、その記録を残しておくことが重要です。また通知した金額と実際の支払額が異なると要件を満たさなくなるため、金額は慎重に確定させてください。
決算直前でも、まだ間に合う
未払費用の計上は、複雑な節税スキームとは違います。「正しく発生した費用を、正しい期に計上する」という、ごく基本的な経理処理です。それでも、見落としている会社が驚くほど多いのが現実です。
決算日まで残り1〜2ヶ月というタイミングに差し掛かったら、ぜひ今回の3点を顧問税理士と一緒に確認してみてください。特に従業員賞与の未払計上は、通知のタイミングが決算日を過ぎると使えなくなるため、早めのアクションが肝心です。
「今期、利益が出すぎてしまった」と感じている社長ほど、ここで差がつきます。決算前の30分の確認が、数百万円の節税につながることもあります。ぜひ今日中に、顧問税理士へ一本連絡してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。