先日、飲食チェーンを経営している社長と食事をしたとき、こんな話になりました。
「今期は久しぶりに利益が出たんだけど、決算直前で何もできなかった。もっと早く動けばよかった」
その方の会社には、取引先への売掛金が数百万円ある状態でした。にもかかわらず、その売掛金が「節税の道具」になるとは思っていなかったんです。
実は、売掛金を持っているだけで使える節税策があります。それが貸倒引当金です。
「もらえていないお金」を経費にできる、という発想
売掛金というのは、商品を売ったけどまだ代金を受け取っていないお金のことです。取引の世界では当たり前のように発生しますが、これは「いつかもらえる予定のお金」であって、まだ手元には来ていない。
つまり、回収できないリスクがゼロではない、ということでもあります。
貸倒引当金は、その「万が一回収できなかったときのリスク」をあらかじめ費用として見積もり、今期の経費に計上できる仕組みです。実際に貸し倒れが起きていなくても、一定の計算式に基づいて損失を先取りできる、非常に合理的な制度なんです。
売掛金500万円なら、約27万円が経費になる
具体的な数字で見てみましょう。
期末時点の売掛金残高が500万円あったとします。中小企業の場合、その残高に対して最大5.5%を貸倒引当金として損金(経費)に算入できます。計算すると、500万円 × 5.5% = 27万5,000円。
この金額がそのまま今期の経費として認められるわけです。
法人税率を約30%と仮定すると、27万円の経費計上で約8万円の税負担を減らせる計算になります。「たった8万円」と思うかもしれませんが、売掛金の残高が大きい会社ならこの効果はさらに膨らみます。売掛金が2,000万円あれば、110万円の経費計上、30万円超の節税も視野に入ってくる話です。
使えない会社があるから、ここは要注意
ただし、貸倒引当金には誰でも使えるわけではない、という前提条件があります。
現行の税制では、中小企業(資本金1億円以下の法人など)に限り、この一括評価の貸倒引当金が認められています。大企業は原則として使えない制度です。また、法人税の申告で青色申告をしていることも条件のひとつです。
さらに、売掛金の中に「グループ会社への債権」や「貸付金」が含まれる場合は計算から除外するなど、細かいルールも存在します。
「うちの会社は使えるか?」という判断は、ひとりで悩まず、決算前に税理士に確認するのが一番の近道です。
決算が終わってからでは遅い
この節税策が特に有効なのは、利益が出ている決算期です。
赤字の期に経費を積んでも、税負担の軽減効果は限定的です。逆に言えば、「今期は業績がいい」と感じている社長ほど、決算前にこの手を打つ価値がある。
貸倒引当金は、決算日時点での残高をベースに計算します。つまり、決算が締まった後に「やっておけばよかった」と気づいても、もう手遅れなんです。
売掛金の残高、最後に確認していますか?
日々の業務に追われていると、売掛金の残高を「なんとなく把握している」状態になりがちです。でも決算前の数字の確認は、節税の観点からも非常に重要です。
今期の売掛金残高を一度きちんと洗い出してみてください。そして、顧問税理士にひと言「貸倒引当金、使えますか?」と聞いてみてほしいのです。
その一言が、数十万円の節税につながるかもしれません。利益が出ているのに使える手を使わないのは、純粋にもったいない話です。決算月が近づいているなら、今すぐ確認するタイミングです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。