先日、ある社長からこんな相談を受けました。「毎年3月が終わってから『あれをやっておけばよかった』ってなるんですよ。今年こそ事前に動きたくて」。年商10億円を超える会社でも、こういう「終わってから気づく節税」は驚くほど多いんです。

特に3月決算は、期末に向けて手が打てる対策が集中するタイミング。今日は実際によく耳にする見落としを5つ紹介します。1〜2個は「まだ間に合う」ものが見つかるかもしれません。

5位:短期前払費用を活用していない

毎月払いにしている費用を、3月末までに「年払い」へ切り替えるだけで、今期に全額を経費計上できます。これが「短期前払費用」のルールです。

保険料、顧問料、家賃、クラウドサービスの利用料など、対象になるものは意外と多い。月10万円の支払いなら、年間120万円を今期に引き込めます。

注意点は「支払いから1年以内に等質・等量のサービスが提供されること」という要件があること。3月31日に振り込むだけでは足りない場合もあるので、早めに動くのが鉄則です。

4位:30万円未満の備品を来期に先送りしていた

「来期に新しいPCを買おう」と思っているなら、少し考え直してみてください。中小企業向けの「少額特例」では、30万円未満の備品を購入した期に全額経費として落とせます。

3月末までに購入すれば、今期の利益を圧縮できます。PCやソフトウェア、打ち合わせ用のディスプレイ、オフィス家具なども対象です。年間合計300万円(青色申告が条件)という上限はありますが、「来期に使うものを先行購入する」感覚で動くと節税の幅が広がります。

複数の備品をまとめて購入する場合は、1点ずつ30万円未満であれば問題ありません。ただし合計額が300万円の上限に達しないよう計画的に動くことが大切です。

3位:交際費の飲食費ルールが変わったのを知らなかった

2024年4月の税制改正で、飲食費の経費化ルールが大きく変わりました。1人あたり1万円以下の飲食代は、全額損金算入できるようになっています。改正前の上限は5,000円でした。

この変更を知らずに旧ルールのまま申告していると、経費にできるはずの金額を丸ごと損してしまいます。取引先との食事が多い会社ほど影響は大きい。

判定は消費税抜きの金額で行い、参加人数の記録も必要です。過去の申告に修正が必要かどうかも含めて、顧問税理士に一度確認してみることをおすすめします。

2位:決算賞与の書面通知を3月末までにしていなかった

「決算賞与の未払計上」は、3月決算の節税の中でも効果が大きく、かつ期末ギリギリまで使えるおすすめの手法です。

やり方はシンプルです。3月末までに「誰にいくら支払うか」を全員に書面で通知し、4月中に実際に支払えば今期の損金として計上できます。社員10名に計100万円の賞与を出す場合、実効税率22〜34%で最大34万円の節税になります。

注意点は「全員への書面通知」と「4月中の支払い」の両方が必須なこと。口頭だけ、通知漏れがある、5月に支払った——どれもアウトです。「言った言わない」にならないよう、必ず書面を残してください。

1位:そもそも決算3ヶ月前に何も動いていなかった

上の4つを全部知っていても、3月末ギリギリに気づいたのでは手が打てないことも多い。これが最大のミスです。

設備投資は発注から納品まで時間がかかります。賞与計画も突然決めると現場が混乱します。短期前払費用への切り替えは、先方との契約変更が必要なケースもあります。どの手法も「動けるタイムラグ」があるんです。

来期からの対策として、12月の段階で顧問税理士と「利益シミュレーション」の打ち合わせを一度入れておくことを強くおすすめします。「今期あといくら利益が出そうか」を早めに把握しておくだけで、打てる手の幅がまったく変わります。


3月決算の会社が節税で損をするのは、手法を知らないのではなく、「動くタイミング」を逃すことがほとんどです。今期の決算前に、この5つをもう一度チェックしてみてください。まだ間に合う対策が必ず1つはあるはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。