先日、年商2億円ほどの建設会社の社長から、こんな電話をいただきました。

「先生、申告書って5月末に出せばいいんですよね。まだ1週間あるから大丈夫ですよね?」

その一言を聞いて、私はすぐに聞き返しました。「決算賞与は計上しましたか?3月の未払い費用は?少額減価償却は全部チェックしましたか?」

電話口で少し間があって、「……それ、なんですか?」という返答が返ってきました。

申告書を出す前に、必ずこれを確認してほしい

3月決算の会社の申告期限は5月31日です。この期限を過ぎると、申告内容の変更は原則できなくなります。修正申告は「追加で払う」方向にしか使えないので、節税チャンスを取り逃がしても後から取り戻す方法がないのです。

税務署は「あなたの会社にはまだこんな節税ができますよ」とは教えてくれません。自分で、あるいは税理士と一緒に確認するしかないのです。

では、5月末の申告前に必ず見直しておきたいポイントを3つ、お伝えします。

その1:決算賞与の計上漏れがないか

3月決算で社員に賞与を出す予定があるなら、3月31日時点で「支給額が確定・全員に通知済み・1ヶ月以内に支払う」という3つの条件を満たしていれば、今期の損金に計上できます。

よくあるのが「賞与を払うつもりだったけど、計上し忘れていた」というケースです。支給総額が500万円なら、それだけで170万円ほどの税負担が変わってくる計算になります。

賞与の決定・通知の記録が残っているかどうか、今すぐ確認してみてください。

その2:3月分の未払費用を落とし切っているか

3月中にサービスを受けたけれど、請求書が4月以降に届いたというケースは意外と多いものです。顧問料、保険料、広告費など——これらは「費用が発生した月(3月)」に計上するのが原則です。

「請求書がまだ来ていないから」という理由で4月計上にしてしまうのは、正確には誤りです。3月分として確定している費用は、3月の未払費用として計上することができます。

金額が大きい月次契約の費用ほど影響が出ます。外注費、賃借料、リース料——漏れなくチェックしておきましょう。

その3:少額減価償却の特例を使い切っているか

中小企業には「取得価額30万円未満の資産を一括で損金算入できる」特例があります(年間合計300万円まで)。

ところが、決算直前に購入した備品や設備でこの特例を適用し忘れているケースがあります。ソフトウェア、パソコン、工具——3月中に取得したものについて、減価償却の計算方法を今一度確認してみてください。

この特例を使うかどうかで、数十万円単位で税額が変わることがあります。細かい話に見えますが、積み上げると無視できない金額になります。

600万円の経費計上で、200万円の節税が実現する

少し具体的な数字で考えてみましょう。

年商3億円の会社の実効税率はおよそ34%です。前述の3つのポイントを見直して、合計600万円の経費を適切に計上し直せると、計算上は約200万円の節税になります。

「600万円なんて大げさな」と思うかもしれません。でも、決算賞与200万円・未払費用150万円・少額減価償却250万円と積み上げると、決して珍しくない数字です。年商規模によって金額は変わりますが、考え方は同じです。

期限を過ぎたら、一切やり直しはきかない

繰り返しになりますが、申告書を提出した後の節税は基本的にできません。「更正の請求」という制度はありますが、使える場面は限られており、節税目的には使えないケースがほとんどです。

5月31日まであと少しの今が、文字通り最後のチャンスです。

顧問税理士に「決算賞与・未払費用・少額減価償却の確認をしたい」と一声かけてみてください。それだけで、見落としていた節税策が見つかることは珍しくありません。

申告書にハンコを押す前に、一度だけ立ち止まって確認する——その習慣が、会社の手元に残るお金を増やします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。