先日、3月決算の食品卸を経営する社長から、こんな連絡が届きました。

「もう2月末なんですけど、今期の利益が思ったより出てしまって…。今から何かできますか?」

焦る気持ちはよくわかります。でも結論から言うと、決算直前でも間に合う節税はあります。しかも、うまく組み合わせれば経費を300万円ほど積み上げ、実効税率34%換算で約100万円の節税効果が出せます。

今回は、決算2〜3ヶ月前から使える4つの手段をご紹介します。

短期前払費用:来期分の支払いを今期に前倒しする

家賃・保険料・顧問料など、毎年支払っているものを「月払い→年払い」に切り替えるだけで、来期1年分まで今期の損金に算入できます。

たとえば月10万円の事務所賃料を決算前に年払い(120万円)に切り替えると、その120万円を全額経費計上できます。前払いなのに「費用」として認められる、使い勝手の良い手段です。

条件は3つ。「1年以内の前払いであること」「継続して同じ処理をすること」「支払い済みであること」です。来年だけ突然やめると否認リスクがあるので、継続前提で検討してください。

少額減価償却特例:30万円未満の備品を今すぐ買う

中小企業であれば、30万円未満の備品・設備は購入した年度に全額経費計上できます(年間合計300万円まで)。

パソコン、業務用スマートフォン、オフィス家具、ソフトウエア——「そろそろ買い換えたい」と思っていたものがあるなら、今期中に購入するのがベストです。

注意点は「取得+使用開始」が今期中に完了していること。注文だけして未着だと経費になりません。複数買う場合は合計額が300万円を超えないかを事前に確認しておきましょう。超えた分は通常の減価償却になります。

決算賞与:書面通知さえすれば未払いでも今期の経費に

「賞与を出すと経費になるのは知っているけど、資金が足りない」という社長は多いです。決算賞与には、実際に支払わなくても経費計上できる仕組みがあります。

決算日前に全従業員へ賞与の金額と支払日を書面で通知し、翌期首から1ヶ月以内に実際に支払えばOKです。3月31日決算なら、3月中に通知書を渡し、4月末までに支払えば今期の損金に算入できます。

気をつけたいのは「全員への通知」という要件です。一部の従業員だけ通知して他を省略すると全額否認されるリスクがあります。通知書のフォーマットと配布記録は必ず残しておきましょう。

不良在庫の廃棄損:眠っている在庫を整理する好機

「売れ残りの在庫がある」「古すぎて使い物にならない素材がある」というケースで使えるのが廃棄損です。決算期中に廃棄処分した在庫は、その帳簿価額を損失として計上できます。

廃棄する際は証跡が命です。廃棄業者の証明書、写真、廃棄記録などをきちんと保管しておいてください。書類だけ作って実際には廃棄していないケースは否認の対象になります。「廃棄した事実」を客観的に証明できるかどうかが分かれ目です。

4手段を組み合わせると何が起きるか

上記の4手段をフル活用すると、経費の積み上げ合計は300万円前後になることもあります。実効税率34%で計算すれば、約100万円の税負担が減る計算です。

もちろん、すべての手段がすべての会社に使えるわけではありません。自社の状況(従業員数、在庫の有無、使える設備費の枠)に合わせて優先順位を整理するのが現実的です。

決算前の「節税できたかも」という後悔は、毎年同じタイミングで繰り返されます。今年こそ決算の2〜3ヶ月前から動き始め、税理士と一緒に使える手段を洗い出しておくと、来年の今ごろに焦らずに済みます。まず自社の今期利益の概算を出してみることから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。