先日、ある社長からこんな連絡が来ました。

「今期は利益が出たので、自分へのボーナスを200万円出そうと思っているんですが、これって経費になりますよね?」

答えは「届出をしていれば、なります」。でも届出なしでそのまま振り込んだら、200万円がまるごと経費にならないんです。

役員報酬に関するルールは、一般の従業員給与とは別物です。知らずに損している社長は、今も少なくありません。

役員賞与はなぜ「そのまま」だと損金アウトなのか

従業員へのボーナスは、支払えばそのまま経費(損金)になります。ところが役員への賞与は、税法上の扱いが全く違います。

役員は会社の利益を自分でコントロールできる立場にあります。そのため、決算直前に「今期は儲かったから自分へのボーナスを弾もう」と動かれると、利益操作ができてしまう。税務署はそれを防ぐために、役員賞与を原則として損金不算入としているのです。

ただし、一定の手続きを踏んだ賞与だけは例外として認める制度があります。それが「事前確定届出給与」です。

損金に算入するための3つの条件

事前確定届出給与として認められるには、次の3つをすべてクリアする必要があります。

①株主総会で支給日と金額を決議する

いつ、いくら支払うかを株主総会で正式に決めます。「だいたいこのくらい」は通用しません。日付と金額を具体的に決議することが出発点です。

②総会後おおむね1か月以内に税務署へ届出する

決議した内容を税務署に届け出ます。期限は株主総会のあと「おおむね1か月以内」または事業年度開始から4か月以内の早い方です。この期限を1日でも過ぎると、届出は無効になります。

③届出通りの日付・金額で1円の狂いもなく支給する

ここが最大の落とし穴です。届出した日付に、届出した金額を、文字通りピッタリ支払わなければなりません。

「銀行の手続きが遅れて翌日になった」「端数を切り捨てて199万9,000円にした」——こういったケースでも、200万円の全額が損金不算入になります。1円のズレが68万円の税負担増につながるわけです。

実際にどれくらい税負担が変わるか

法人税・地方税を合わせた実効税率はおよそ34%前後です。200万円の役員賞与が損金になれば、単純計算で約68万円の税負担が減ることになります。

「200万円のボーナスを出すかどうか」だけでなく、「手続きをするかしないか」で68万円の差が生まれるということです。これは決して小さい話ではありません。

「1円でも違ったら全額アウト」の厳しさ

届出した金額と異なる額を支払った場合、「差額分だけ損金不算入」にはなりません。届出した金額の全額が損金不算入になります。

たとえば200万円と届け出て、実際に199万9,000円しか払えなかったとしましょう。損金にできるのは差額の1,000円分……ではなく、200万円がまるごと損金アウトになるのです。この厳しさを知っておくことが重要です。

支払日は必ずカレンダーに入れておく。振込の操作ミスが起きないよう事前に金融機関へ依頼しておく。そういう地味な準備が、実は節税効果を守ることに直結しています。

届出のタイミングを逃さないために

多くの会社は3月決算であれば5〜6月に株主総会を開きます。届出の期限はその1か月後ですから、6〜7月が締め切りになるケースが多い。

ここで注意したいのが、決算が近づいてから慌てて動いても間に合わないという点です。事前確定届出給与は「事前」が前提です。役員賞与を損金にしたいなら、年度のはじめ、あるいは総会の準備段階から考え始める必要があります。

「今期の利益が見えてきたから急いで届出しよう」という動き方では、制度の恩恵を受けられません。

まずは顧問税理士に確認を

事前確定届出給与は、手続き自体はそれほど複雑ではありません。ただし、期限管理と金額の一致という2点において、ミスが許されない制度です。

まだ活用していない会社は、来期に向けて今から税理士と相談しておくのがおすすめです。決算期が近づいてからでは選択肢が狭まります。自分へのボーナスを出すなら、「届出という手間」を惜しまないことが、数十万円単位の節税に直結します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。