「3月決算なんですが、もう手遅れですよね?」

毎年2月の終わりごろになると、こういう相談が増えます。先日も、年商3億円の建設資材会社の社長から、決算3週間前にまったく同じことを聞かれました。

「手遅れどころか、今からでも十分間に合いますよ」

そう答えた後、4つの手段を一緒に確認したところ、結果として300万円近い経費を計上でき、約100万円の節税につながりました。「決算直前は何もできない」というのは思い込みです。今回はその具体的な中身をお伝えします。

決算賞与は「通知」が命

一つ目は決算賞与です。「支払いは来月になるけど大丈夫?」とよく聞かれますが、ポイントは支払いの完了ではありません。3月31日までに全従業員へ支給額を文書で通知し、その後1ヶ月以内に実際に払えば、今期の損金として認められます。

1人あたり10万円、従業員20名なら200万円の決算賞与です。従業員への還元と節税が同時に実現できる手段として、使い勝手は抜群です。

ただし「口頭で伝えた」では認められません。紙かメールで記録を残しておくことが大前提です。通知書の書き方がいい加減だと、税務調査で否認されるリスクがありますので、書式は税理士に確認を。

30万円未満の備品は今期中に買い切る

二つ目は少額減価償却の特例です。中小企業であれば、取得価額30万円未満の備品やソフトウェアを今期中に購入・使用開始するだけで、全額をその期の経費にできます。

通常、高額な機器は耐用年数に応じて数年かけて償却しますよね。でもこの特例なら、29万9,000円のノートパソコンを10台まとめて買えば約300万円が今期の経費に。年間上限は300万円です。

「そろそろ買い替えどきだな」と思っていたパソコン、プリンター、什器などがあれば、今期中に動くのが賢い選択です。ただし、購入しただけでなく「今期中に使用を開始すること」が条件です。3月に届いて倉庫に積んだままでは認められません。

保険料・リース料を年払いに切り替える

三つ目は短期前払費用の活用です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、仕組みはシンプルです。

4月以降の期間に対応する費用であっても、契約上の支払いを3月中に一括で行えば、今期の経費として認められます。火災保険、生命保険、事務所の賃料、リース料などが対象です。

年間保険料60万円を3月に一括払いすれば、60万円がまるごと今期の経費になります。毎月払いから年払いに切り替えるだけで節税になる、という話です。

ただし、「今期だけ年払いにして来期からまた月払いに戻す」はNGです。一度年払いにしたら継続することが要件になっています。また、前払い期間は1年以内でなければなりません。

修繕・メンテナンスを前倒しで実施する

四つ目は修繕費の前倒し実施です。「どうせ来期にやろう」と後回しにしていた設備のメンテナンスや修繕工事を、今期中に完了させると経費が確定します。

この手段のいいところは、来期に払う予定だったお金を前に持ってくるだけなので、実質的な持ち出しが増えないことです。キャッシュへの影響を抑えながら節税できます。

外壁の補修、空調の分解洗浄、駐車場の舗装補修などがよくある対象です。ただし「修繕費」と「資本的支出(減価償却が必要)」の区分は、工事の内容によって変わります。大規模な改修は事前に税理士へ確認を取っておくことをお勧めします。

4手段を組み合わせると100万円の節税が見えてくる

ここまでの4つの手段を組み合わせ、仮に合計300万円の経費を今期に積み上げられたとします。法人実効税率を約34%とすると、単純計算で約100万円の節税効果になります。

手段経費増加の目安
決算賞与100〜200万円
少額減価償却最大300万円
短期前払費用30〜100万円
修繕費の前倒し50〜200万円

「100万円くらい」と思う方もいるかもしれませんが、これは「払わなくてよかった税金が手元に残る」お金です。決算3週間前から動いて手に入るなら、十分すぎる価値があります。

今すぐ税理士に連絡してほしい

どの手段も、要件を一つ外すだけで税務調査で否認されるリスクがあります。「自社に当てはまるか」「どこまで計上できるか」は、必ず担当の税理士と確認してください。

もし今の税理士が決算直前に何も提案してこないとしたら、それ自体が一度見直すシグナルかもしれません。節税は、申告後に「あのとき動けばよかった」と悔やんでも取り返せません。「まだ3月がある」というこのタイミングこそ、最も動きやすい瞬間です。今日中に税理士へ連絡してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。