先日、年商2億円台の卸売業を営む社長から、こんな連絡をもらいました。「決算まであと2週間なんだけど、今からでも何かできることってある?」
実は、この「あと少し」の時期が一番大事です。準備できている会社とそうでない会社では、最終的な税負担が100万円単位で変わることがあります。今回は、3月決算の会社がいま確認しておくべき5つのポイントを整理しました。
5位|棚卸と廃棄ロスの損失計上
決算前に必ず倉庫や在庫を見直してください。陳腐化した商品、使い物にならなくなった材料、不良品として処分予定のもの——こういった在庫は「廃棄損」として損失計上できます。
ただし、「捨てたつもり」では税務上認められません。廃棄日時・数量・金額を記録した書類を残し、実際に廃棄した証拠も用意しておくことが必要です。売れない在庫を抱えたまま決算を迎えると、実態より高い税金を払うことになってしまいます。
4位|交際費の中に「全額損金」が眠っている
交際費は原則として損金算入に上限がありますが、2024年度の改正で使えるルールが広がりました。社内外を問わず、1人あたり1万円以下の飲食費は交際費に該当せず、全額損金算入できるようになっています。
過去の領収書を見直してみてください。「交際費」でまとめていたけれど、実は1人1万円以下のものが混じっていた——というケースは意外に多いです。きちんと区分すれば、課税所得を圧縮できる余地が生まれます。勘定科目の整理は、決算前でも今日からできる対策です。
3位|30万円未満の備品は「今月中」に動く
中小企業には、30万円未満の備品を購入した年度に全額費用化できる「少額減価償却資産の特例」があります。ポイントは、購入と使用開始の両方が今期中に完了していることです。
パソコン、カメラ、業務用ソフトのライセンス、オフィス家具——必要なものがあるなら、3月末より前に購入して実際に使い始めることが条件になります。「とりあえず注文した」だけでは使用開始とはみなされないので注意してください。なお、この特例には年間合計300万円の上限があります。
2位|決算前に賞与支給を「確定」させる
決算月までに決算賞与を支給するのは資金繰り的に難しい——そう思っている社長も多いですが、実は支給しなくても今期の損金に算入できる方法があります。
条件は3つです。①決算日までに支給額を全従業員に書面で通知していること、②決算日から1ヶ月以内に実際に支給すること、③全員に同じタイミングで支払うこと。この要件を満たせば、「未払賞与」として今期の損金に落とせます。
仮に1人あたり30万円のボーナスを10人に支給する場合、300万円が今期の損金になります。法人税率30%の会社なら、それだけで90万円の節税効果です。
1位|役員報酬の設計は「今」が最後のチャンス
節税インパクトが最も大きいのが、これです。役員報酬は原則として期首から3ヶ月以内(定期同額改定)にしか変更できません。3月決算の会社なら、4月・5月・6月が改定できる最終ウィンドウです。
今期の利益がある程度見えてきた今の時期に、来期の報酬額を固める——この意思決定を先延ばしにしている会社は少なくありません。役員報酬が低すぎると利益が残りすぎて法人税が増え、高すぎると所得税・社会保険料の負担が増える。このバランスを今の数字で計算して設定することが、年間で最も大きな節税につながります。
今期の着地利益を税理士と一緒に試算したうえで、来期の報酬額を今月中に固める準備を始めてください。
いかに日常業務に追われていても、決算前の数週間は「数字を直視して、動ける選択肢をつぶしていく」時間です。5つのチェックリストを眺めて「自分の会社はどこが手薄か」を確認するだけでも、今期の税負担は変わってきます。顧問税理士への連絡は、早ければ早いほど選択肢が増えます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。