「今期の役員報酬、まだ変えられますか?」
そんな話をすると、「えっ、まだ間に合いますか?」と焦る社長さんが毎年たくさんいます。実はこれ、タイミング次第では手遅れになる話なんです。
役員報酬は「年に一度しか動かせない」
役員報酬には、定期同額給与というルールがあります。期が始まってから3ヶ月以内に決めたら、そのあとは1年間ずっと同額でなければならない、というものです。
決算期が4月なら、6月末までが改定のチャンス。それを過ぎてしまうと、来期の株主総会まで動かせません。途中で変えてしまうと、変更した部分が損金として認められなくなり、節税効果がゼロになります。
「もう少し上げておけばよかった」「下げておけばよかった」と気づいても、1年間は手が打てない。だからこそ、期首の3ヶ月が節税において本当に重要なんです。
高すぎると、所得税と社会保険がのしかかる
では役員報酬は高ければ高いほどいいか、というとそうでもありません。
課税所得が900万円を超えると、所得税率は一気に33%に跳ね上がります。住民税10%を加えると限界税率は43%超。さらに社会保険料も報酬が増えるほど連動して上がります。
月150万円の役員報酬を取れば年収1,800万円。聞こえはいいですが、所得税・住民税・社会保険料を合わせると700〜800万円近く持っていかれることも珍しくありません。手取りベースで見ると、思ったほど残らないんです。
低すぎると、今度は法人税が重くなる
反対に、役員報酬を低く抑えすぎると、法人の利益が膨らみます。
法人税は利益800万円以下なら中小企業の軽減税率(実効税率約23%)が使えますが、800万円を超えた部分には実効税率約34%の法人税がかかります。「役員報酬を少なくしたら法人に利益が残った」は一見いいことのようで、その利益に高い税率が適用される落とし穴があります。
しかも、法人に残したお金を後から手元に引き出そうとすると、配当・役員賞与・退職金などの形を取るしかなく、どこかのタイミングで必ず課税されます。「法人に貯めておけばお得」は半分正解で、半分は誤解です。
最適額は「逆転点」を探す作業
では、役員報酬はいくらに設定するのが正解なのか。
答えは「所得税と法人税の逆転点を毎期シミュレーションして決める」ことです。
たとえば法人の利益が年間1,200万円あると仮定します。役員報酬を800万円にすれば、法人の課税所得は400万円となり軽減税率の範囲内に収まります。一方、役員個人は各種控除後の課税所得がおよそ600万円台、所得税率は20〜23%程度に抑えられます。
この「ちょうどいいライン」は、会社の利益水準、家族への給与支払い、社会保険料の水準、退職金の積み立て状況などで毎年変わります。だからこそ、毎期きちんと数字を見直すことが必要なんです。
改定前に確認しておきたいこと
期首の改定タイミングに向けて、事前に整理しておくといいポイントがあります。
前期の法人利益が800万円を上回ったか、自分の課税所得が900万円を超えているか。小規模企業共済やiDeCoなど所得控除の活用状況、家族への役員報酬・専従者給与の見直し余地。これらをひとつひとつ確認した上で、税理士と試算表を作るのが一番確実です。感覚ではなく、数字ベースでシミュレーションすることが、最適設計の大前提になります。
改定できるうちに、今すぐ動く
期初から3ヶ月は、あっという間に過ぎます。「そのうち考えよう」と思っているうちに期限を過ぎてしまう社長さんは、毎年後を絶ちません。
もし今期まだ改定期限内であれば、今すぐ顧問税理士に連絡してシミュレーションを依頼してください。1回の見直しで、年間数十万円単位の差が生まれることも珍しくありません。役員報酬の設計は、節税の中でも特に「タイミングがすべて」の分野です。来期に持ち越さず、今期の数字をもとに最適額を検討しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。