先日、ある社長からこんな連絡が届きました。「今から役員報酬って変えられますか?今期、利益が思ったより出てしまって…」

決算月を確認すると12月決算。連絡が来たのは4月初旬でした。残念ながら、その会社の変更期限は3月末。すでに1週間以上、過ぎていました。

「1ヶ月早く相談してくれていたら」と思わずにはいられない、本当によくある話です。

役員報酬を変えられるのは、年に1回だけ

法人税法上、役員報酬を経費(損金)として認めるためには「定期同額給与」という条件を満たす必要があります。毎月、同じ金額を継続して支払わなければならない、というルールです。

では、いつなら変更できるのか。原則として事業年度の開始から3ヶ月以内に限られています。

12月決算の会社なら毎年3月末が締切。3月決算なら6月末、9月決算なら12月末です。この窓を過ぎると、原則として翌期まで変更できません。チャンスは年に一度しかないのです。

月5万円の調整が、年60万円の差になる理由

「たかが5万円」と思う方もいるかもしれませんが、役員報酬の調整は法人税と個人の所得税・社会保険料の両方に同時に影響するため、トータルの効果は思いのほか大きくなります。

役員報酬を月5万円増やした場合、法人の課税所得は年間60万円減ります。一方で個人側には所得税・住民税・社会保険料の負担増が生じる。逆に月5万円減らせば、法人税は増えますが個人の手取りは改善される。

どちらに動かすと得なのかは、今期の利益水準・代表者の年齢・家族構成・退職時期などによって変わります。うまく調整できた場合、法人税と個人の税・社保を合わせて年60万円前後の節税につながることもあります。

よくある2つの失敗パターン

ひとつは「昨年と同じでいい」という思考停止です。昨年と利益が変わっていれば、最適な役員報酬額も変わっています。業績が伸びている会社ほど、見直しを怠ると法人に利益が積み上がり、税負担だけが膨らんでいきます。

もうひとつが「締切を知らなかった」というケース。これが冒頭の社長の状況です。税理士と顧問契約を結んでいても、年に1〜2回しか面談がなければ、このタイミングを見逃すことがあります。自分で締切を把握しておくことが、何より大切です。

期中変更の「例外」はハードルが高い

「原則3ヶ月以内とはいえ、例外もあるのでは?」という質問をよく受けます。確かに、業績が著しく悪化した場合や役職変更が伴う場合には、期中変更が認められることがあります。

ただし「利益が出そうだから減らしたい」という理由では認められません。「著しい悪化」のハードルは高く、税務調査で恣意的な変更と判断されると、その分が損金不算入になるリスクがあります。期中変更は、本当に止むを得ない事情がある場合にのみ、税理士と慎重に判断してください。

締切前に確認しておく3つのこと

役員報酬の見直し期限が近い場合、次の3点を整理しておくと税理士との相談がスムーズです。

  • 今期の着地利益の見込み(直近の試算表ベースでOK)
  • 現在の役員報酬額と、個人側の税・社保の負担感
  • 代表者・役員のライフプラン(退職時期、配偶者の扶養状況など)

この3点を持参するだけで、「どの方向にいくら動かすと得か」のシミュレーションが格段にやりやすくなります。

今日、一度確認してみてください

役員報酬の見直しは、締切直前に慌てても十分な検討時間がとれません。理想は締切の1〜2ヶ月前から試算を始め、余裕を持って変更手続きを行うこと。

今期の締切がまだ先にあるなら、今すぐ試算表を引っ張り出して今期の利益見込みを確認してみてください。もし締切が迫っているなら、今日中に税理士へ連絡するのをお勧めします。年60万円の節税を「知らなかった」の一言で手放すのは、あまりにもったいないです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。