先月、売上10億規模の製造業の社長からこんなメッセージが届きました。
「三原さん、4月から税制が変わるって聞いたんですが、うちは何か対応しないといけないことありますか?決算前でバタバタしていて、正直まだ調べられていなくて……」
こういった声、今年は本当に多いです。2026年4月の税制改正は、対応すべき項目が複数重なっていて、しかもそれぞれ期限が異なります。後回しにすると、取り返しのつかない損をするケースもあります。
今日は「今すぐ動くべき優先度」の高い順に3つ整理してみます。顧問税理士との打ち合わせ前の予習として、ぜひ読んでみてください。
3位|賃上げ促進税制——今期の給与計画を今すぐ確認
まず、「やると得をする」制度から始めましょう。
賃上げ促進税制は、前年比1.5%以上の賃上げをした中小企業が、給与増加額の最大45%を法人税額から直接差し引ける優遇措置です。「税額控除」なので、所得から引くだけの「損金算入」と比べても、節税効果は段違いに高いです。
たとえば、給与総額1億円の会社が前年より300万円(3%)賃上げすれば、最大135万円の法人税が減ります。実質的に「国が賃上げを肩代わりしてくれる」仕組みだと言っても過言ではありません。
適用期限は2027年3月まで。ただし、今期の賃上げ計画が決まってから動いても、決算をまたぐと適用できないケースがあります。「検討中」ではなく、今期の数字を今すぐ確認してください。
2位|インボイス2割特例の終了——2026年9月末が分岐点
次は、「知らなかったでは済まない」リスクの話です。
インボイス制度が始まった2023年、免税事業者がやむを得ず課税事業者に転換した方向けに、消費税の納税額を売上消費税の2割に抑える「2割特例」が設けられました。この特例が、2026年9月末で終了します。
10月以降は本則課税か簡易課税で計算することになります。多くの方が「2割払っていれば大丈夫」という感覚でここまで来ているため、突然の負担増に気づいていないケースが少なくありません。
期末に「思ったよりキャッシュが足りない」という事態を避けるために、今すぐ2点を確認してください。まず、自分がインボイス登録した免税事業者かどうか。次に、10月以降の本則課税と簡易課税、どちらが有利かを税理士と試算すること。半年を切っているので、早めに手を打ちましょう。
1位|事業承継税制の特例措置——これだけは今すぐ動いてください
3つの中で、もっとも「後回し禁止」なのがこれです。
自社株を次世代に引き継ぐ際の相続税・贈与税を猶予・免除できる「事業承継税制の特例措置」。適用には、2027年12月31日までに都道府県への申請・認定を受ける必要があります。
一見「まだ1年半ある」ように見えますが、計画策定から認定まで1年以上かかるのが通常です。専門家を探し、現状を整理し、計画を立て、申請書を仕上げる——この工程を考えると、「今年中に動き出す」のがギリギリのラインです。
自社株の評価が高い会社では、この特例を使うかどうかで、相続税の負担に数千万円から数億円単位の差が生まれることもあります。「自分はまだ若いから」「後継者が決まってから」は禁物。計画策定期間を先に確保しておく発想が大切です。
事業承継を視野に入れている社長は、今すぐ専門家への相談をスタートしてください。
動く順番、これで決まり
いくつもの制度が重なって「何から手をつければいいか」と感じる方も多いと思います。シンプルに優先度をつけるなら、こうなります。
- 今週中:事業承継税制の相談先を探す(専門家のスケジュールを押さえる)
- 今月中:インボイス2割特例の適用状況と10月以降の税負担を試算
- 今期中:賃上げ計画の税額控除シミュレーションを税理士と確認
税制改正の対応は、「知っているかどうか」で結果が大きく変わります。次に顧問税理士と話すとき、「今回の改正でうちが対応すべきことは何ですか?」と一言聞いてみるだけでも、重要な気づきが得られるはずです。
今日読んだことを、来週の打ち合わせのアジェンダに一つ加えてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。