先日、顧問先の社長に「4月からこの節税が使えます」とご連絡したとき、しばらく沈黙がありました。
「…もっと早く教えてほしかった」というのが、その社長の第一声。年商3億円規模の製造業で、これまで毎月20万円ほど接待費を使っていたのに、あるルールに引っかかって半分ほどしか経費に落とせていなかったと言うのです。
4月は税制改正の「本番」です。国が制度を変えてくれたおかげで、今まで使えなかった節税策が一気に解禁される。知っているか知らないかで、今期の税額がはっきり変わる改正が今年も動き出しています。
中小企業のオーナー社長に特に影響が大きい3つのポイントを、順番にお伝えします。
接待の上限が「1人1万円」に倍上げ
まず、経営者の方が一番反応されるのがこれです。
これまで、接待飲食費を交際費として損金算入するには「1人あたり5,000円以下」という壁がありました。この上限が4月から1人1万円に引き上げられます。
冒頭の社長のケースで計算してみましょう。月20万円の接待費のうち、5,000円超の飲食が多くを占めていた場合、損金にできていたのは実質半分程度。1万円への引き上げによって経費算入できる範囲が広がり、年間で60万円近い節税効果が生まれることもあります。
取引先との会食、ゴルフ後の食事、歓送迎会など幅広い場面で使えます。ただし「飲食費であること」「参加者の氏名・会社名・関係性を記録すること」という要件は変わらないので、領収書の裏に一言メモする習慣は続けてください。
賃上げをすると、法人税が直接減る
2つ目は、少し意外な節税です。
「賃上げ促進税制」という制度をご存じでしょうか。従業員への給与を前年比1.5%以上引き上げると、その増加分の最大45%を法人税額から直接控除できる仕組みです。
ここで重要なのは「控除」という言葉です。損金算入(所得を減らす)ではなく、算出された法人税額そのものから差し引けるので、節税インパクトがひと回り大きい。
例えば、従業員10人・平均給与400万円の会社で1.5%アップした場合、1人あたり年6万円の増加。10人合計で60万円の増加分に対して、その45%にあたる27万円が法人税から直接マイナスになります。
給与を上げると経費は増えますが、税額控除の恩恵を加味すると実質的な手出しはかなり圧縮されます。採用強化や人材定着のために賃上げを検討していた社長には、ぜひこの制度を絡めて考えてほしいところです。
適用には細かな要件があり、毎年度の改正で内容が変わることもあるため、決算前に税理士と一度確認しておくことをおすすめします。
30万円未満の備品は今期に買い切る
3つ目は、即効性という意味では一番使いやすいかもしれません。
「少額減価償却資産の特例」という制度があります。中小企業に限って適用されるもので、30万円未満の備品であれば本来は数年かけて減価償却するところを、取得した年に全額経費として落とせるというものです。
パソコン、スマートフォン、カメラ、タブレット、机や椅子などの什器備品が対象になります。上限は年間300万円まで。
たとえば25万円のノートパソコンを3台購入すると75万円が一括経費化できます。本来なら4年かけて償却するところが、今期に全額落とせる。年度内に利益が出そうなタイミングで備品購入を前倒しにするだけで、かなりの節税になります。
この特例は毎年度の税制改正で延長されてきており、引き続き活用できる見込みです。ただし「中小企業者等」の要件に該当するかどうかの確認は必要です。
まとめると、今すぐ動ける節税がこの3つです。
- 接待交際費の損金算入拡大:1人1万円以内の飲食費が対象に(4月施行)
- 賃上げ促進税制:給与増加分の最大45%を法人税額から直接控除
- 少額減価償却の特例:30万円未満の備品を即全額経費化(年300万円まで)
特に少額減価償却は「年度内に取得すること」が条件なので、今期の利益が見えてきたタイミングで備品購入を検討してみてください。接待費については、4月以降の飲食から対象になるので、経費精算のルールを社内で共有しておくと漏れがなくなります。
顧問税理士がいる方は、「4月の改正でうちに使えるものはありますか?」と一言聞いてみるだけで十分です。まだ税理士がついていない方は、この3つを入口に専門家への相談を検討してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。