決算が近づいてくると、毎年同じ相談が来ます。「先生、もっと早くこの話を聞きたかった」——役員報酬まわりの節税は、タイミングがすべてです。

役員報酬の変更が税務上認められるのは、原則として事業年度が始まってから3ヶ月以内だけ。このルールを知らずに決算を迎えてしまい、「今期はもう無理か」と肩を落とす社長を何人も見てきました。

今回は、節税効果の高い役員報酬まわりの施策を3位から順にご紹介します。数字がリアルなので、自分の会社に当てはめながら読んでみてください。

3位:役員報酬で法人の課税所得を800万円に抑える

「法人税の税率は一律では?」と思っている方もいますが、実はそうではありません。課税所得が800万円以下の部分には実効税率約22%が適用されますが、800万円を超えた部分には約34%がかかります。

たとえば課税所得が1,200万円の会社なら、800万円を超えた400万円の部分に34%がかかります。役員報酬を調整して課税所得を800万円以下に抑えれば、その差額分が22%で済む——単純に言えばこれだけで法人税を数十万円単位で減らせます。

ただし、役員報酬を増やすと社長個人の所得税・住民税・社会保険料も増えます。「どこのバランスで最適化するか」は試算が必要なので、期のはじめに税理士と一緒に計画しておくのが理想です。

2位:配偶者や家族役員への所得分散で税率を下げる

「知っているけどやっていない」——この節税策を前にしたとき、そう答える社長が特に多いです。

日本の所得税は累進課税で、稼ぐほど税率が上がる仕組みです。社長一人が年収1,200万円を受け取ると所得税率33%のゾーンに入りますが、配偶者を役員にして二人で年収600万円ずつに分けると、それぞれ20%のゾーンに下がる可能性があります。所得税率の差だけで年間30万円以上の節税になることもあり、さらに二人分の給与所得控除が使えるため、実際にはもっと有利になるケースも少なくありません。

一点だけ気をつけていただきたいのは「実態」です。配偶者が実際に会社の業務に関わっていることが大前提で、名義だけの役員は税務調査で否認されるリスクがあります。「経理を担当している」「顧客対応をしている」など、実務の実態をきちんと記録に残しておくことが、この節税策を安全に使う条件です。

1位:役員退職金の設計——これが最も強力な節税手段

1位は断然、退職金の設計です。毎月の役員報酬に目が向きがちですが、長期視点で最大の節税効果があるのはここです。

退職金には「退職所得控除」という大きな優遇があります。勤続年数が20年を超えると、1年ごとに70万円が控除されます。勤続30年なら退職所得控除額は1,500万円。さらに退職所得の計算では、控除後の金額を2分の1にした部分にしか課税されません。

仮に退職金が3,000万円の場合、課税対象になるのは(3,000万円 - 1,500万円)÷ 2 = 750万円です。同じ3,000万円を給与として受け取った場合と比べると、課税対象の差は歴然で、税額の差は数百万円規模になることもあります。

重要なのは「今から設計する」ことです。退職金の水準は「最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率」で決まるケースが多く、今の役員報酬の設定が将来の退職金に直結します。引退時に受け取る金額と節税額は、今の設計次第で大きく変わります。

役員報酬の見直しは「今期中」に動くしかない

ここまで読んでいただければ、役員報酬まわりの節税は「知識」より「タイミング」の問題だとおわかりいただけると思います。

役員報酬の変更が認められるのは期初3ヶ月以内。決算が近づいてから「今期こそ見直したかった」と気づいても、もう間に合わないのです。退職金の設計も、今すぐ動き始めることに意味があります。今期の報酬水準が5年後・10年後の退職金の計算に影響するからです。

もし今の事業年度がまだ始まって3ヶ月以内であれば、顧問税理士に「役員報酬の最適化と退職金設計を一緒に見直したい」と相談してみてください。一度きちんと設計しておくだけで、毎年数十万円、引退時には数百万円規模の差が生まれます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。