先日、ITコンサル会社を経営する社長からこんな相談を受けました。「顧問税理士に役員報酬を上げることを検討してと言われたんですが、どのくらい上げればいいのかわかなくて……」
売上は順調に伸びているのに、役員報酬の設定を後回しにしていたとのこと。話を詳しく聞いてみると、最適化するだけで年間150万円以上の節税余地がありました。
じつは役員報酬による節税効果は、業種によって大きく変わります。同じ売上規模でも、飲食業の社長とITコンサルの社長では、年間の手取り差が300万円近くになるケースがあるんです。今日はそのランキングをご紹介します。
なぜ役員報酬が節税になるのか
仕組みをひとつ整理しておきましょう。法人の利益には法人税がかかります。所得が800万円を超えた部分には実効税率が約34%にもなります。
一方、役員報酬は会社の損金(経費)として計上できます。個人側では所得税・住民税がかかりますが、給与所得控除という大きな控除があるため、一定額までは法人税率より個人の実効税率のほうが低い。つまり、適切に役員報酬を引き上げると、法人と個人の合計税負担が減るという仕組みです。
ここで重要なのが「業種によって利益の出やすさが全然違う」という点。節税できる金額の上限は、会社に残る利益の大きさで決まります。
第3位:飲食・小売業(年50〜80万円)
飲食や小売は、食材費・スタッフ人件費・家賃といったコストが重くのしかかります。売上1億円あっても、諸経費を差し引いた手元利益が数百万円というケースは珍しくありません。
利益が小さければ、役員報酬を大きく動かす余地も限られます。むしろ報酬を上げすぎると社会保険料の負担増で逆効果になることもある。節税の実効額として年50〜80万円が現実的なラインです。
もちろん繁盛店や多店舗展開で利益が厚い場合は話が変わりますが、業種全体の傾向としてはランキング最下位になります。
第2位:建設・製造業(年100〜150万円)
建設・製造は飲食と比べると利益率が高め。特に元請け中心の建設業や、独自製品を持つメーカーでは、経常利益率が10〜20%に達するケースもあります。
利益の絶対額が大きい分、役員報酬を最適化する余地も広がります。年商3億・利益率10%であれば利益3,000万円の使い方次第で、年間100〜150万円の税負担差が生まれます。
注意が必要なのは、建設業特有のキャッシュフローの波です。工事代金の入金タイミングがズレやすいため、役員報酬を高く設定してしまうと資金繰りが苦しくなることがある。翌期の案件見込みまで読んだ設計が重要です。
第1位:IT・コンサル業(年150〜300万円)
断トツで節税効果が大きいのがIT・コンサル業です。
理由はシンプルで、原価率の低さです。人一人が知識やスキルで稼ぐビジネスモデルなので、売上の多くが利益に直結しやすい。年商1億・利益率30〜40%というケースも珍しくありません。
利益が大きければ、法人税の実効税率34%がそのままのしかかります。ここを役員報酬で圧縮できれば、節税効果は一気に跳ね上がります。月50万円の報酬と月100万円の報酬では、会社と個人の合計税負担が年間150〜300万円変わるケースがあります。
ただし「高く設定すればするほどいい」という話ではありません。個人の所得税・住民税・社会保険料との兼ね合いがあり、ある額を超えると手取りが逆に減る「逆転ゾーン」が存在します。法人と個人の合計負担が最小になる「最適点」を計算で探るのが正解です。
動けるタイミングは決まっている
ここまで読んで「さっそく報酬を見直したい」と思った方に、ひとつ重要な注意点があります。
役員報酬の変更は、原則として事業年度開始後3ヶ月以内に行わなければ、損金として認められません。決算が迫ってから慌てて上げようとしても、税務上は認められないケースがほとんどです。
動けるのは「決算が終わった直後」です。次の決算まで時間があるうちに設計する、これが鉄則。自分の業種の節税余地を一度試算してもらうだけでも、相談する価値は十分あります。
まだ役員報酬の最適化を検討したことがない方は、次の決算明けを逃さないよう、今から税理士に相談しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。