先日、年商4億円の製造業の社長から、こんな相談を受けました。

「顧問税理士には毎月きちんと払っているのに、なぜか決算のたびに法人税が高くて……。もっとやれることってあるんでしょうか?」

その社長が使っていなかった節税策が、なんと3つもあったんです。しかも、合計すると年間200万円を超える効果があるものばかり。「なんで誰も教えてくれなかったんだ」と、少し悔しそうな顔をされていたのが印象的でした。

今回は、多くの中小企業の社長が見落としている節税策のベスト3を、具体的な数字と一緒にお伝えします。

3位:賃上げ促進税制──社員への還元が、そのまま節税になる

まず3位は、賃上げ促進税制です。「社員の給与を上げたら会社のお金が減るだけでは?」と思われるかもしれませんが、この制度は一味違います。

対象社員の給与を前年より増やすと、増加分の一定割合が法人税額から直接差し引かれる税額控除の仕組みです。損金算入(費用計上)とは異なり、税金そのものが減ります。

たとえば、社員の給与総額を年間100万円引き上げた場合、最大で45万円が法人税から消えます。給与の増加分は経費にもなるため、実質的な節税効果はさらに大きくなります。

この制度は2027年3月決算まで使える中小企業限定の時限措置です。毎年の昇給を検討しているなら、今期から意識的に活用しない手はありません。

2位:経営セーフティ共済──「備え」が全額損金になる制度

2位は、中小企業倒産防止共済、通称「経営セーフティ共済」です。

この制度の最大の特徴は、掛金が全額損金算入できること。上限は月20万円で、年間最大240万円を経費として計上できます。法人税の実効税率を約34%として計算すると、約82万円の節税効果になります。

「お金を外に出すわけだから、実質的には損では?」という声をよく聞きます。でも安心してください。40ヶ月以上加入を続けると、解約時に掛金の全額が手元に戻ってきます。しかも解約返戻金は益金として計上されるため、受け取り時期を意図的にコントロールできるのが実務的な強みです。

利益が膨らんだ期に掛金を積み増し、翌期に解約・再加入するといった使い方も広く行われています。ただし、40ヶ月未満での解約は元本割れになるため、長期視点で組み込むことが前提です。

1位:役員退職金──二重の節税効果を持つ最強の手段

そして1位は、役員退職金です。

「退職金は社長が引退するときの話」と後回しにしていると、大きな機会損失になります。役員退職金は、会社側では全額損金、受け取る社長側では退職所得として課税されるため、普通の給与とは比べものにならないほど税率が下がります。

具体的な数字で見てみましょう。勤続30年の社長が退職金を受け取る場合、退職所得控除は1,500万円。退職金2,000万円を受け取っても、課税対象になるのは(2,000万円-1,500万円)÷2=たった250万円です。

同じ2,000万円を給与として受け取れば、所得税・住民税あわせて700万円以上が税金に消えます。その差は歴然です。

さらに、退職金を支払う会社側は全額損金になるため、その期の法人税も大幅に圧縮できます。個人の節税と法人の節税が同時に実現できる、二重効果を持つのが役員退職金の最大の強みです。

注意点として、「不相当に高額」と税務署に認定された部分は損金不算入となります。功績倍率法(最終報酬月額×勤続年数×功績倍率)を使って適切な金額を設計することが重要です。この点は必ず税理士と一緒に組み立ててください。


3つの制度の節税効果をざっくり整理するとこうなります。

  • 賃上げ促進税制:最大 45万円 の税額控除
  • 経営セーフティ共済:年間 72〜82万円 の節税
  • 役員退職金:数百万〜 1,000万円超 の節税も可能

年300万円の差、というのは決して大げさな話ではないのです。

今期の決算がまだ先であれば、今すぐ動けるものがあるはずです。「この3つをうちで検討しているか」と顧問税理士に一度ぶつけてみてください。節税は、利益が確定してから慌てて動いても間に合わないことが多いので、早めに手を打っておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。