先日、決算月を翌週に控えた社長からこんな連絡が来ました。\n\n「三原さん、去年の決算のあと税理士から『あの請求書、今期に入れられましたよ』って言われたんです。何十万も損した気がして……今年こそ同じ失敗をしたくない」\n\nこれ、決して珍しい話ではありません。むしろ毎年どこかで起きている、もったいないすれ違いです。\n\n## 「払っていない=経費ゼロ」は間違い\n\n多くの社長が「経費=お金が出ていったもの」と思っています。でも税務上は違います。\n\n会計の世界には「発生主義」という考え方があって、「サービスが完了した時点」で費用として認識できます。つまり、決算日までにサービスを受けたなら、まだ請求書が届いていなくても、お金を払っていなくても、今期の経費に計上できるんです。\n\nこれを「未払費用の計上」と言います。\n\n## 具体的にいくらトクするのか\n\n月50万円で外部の業者に業務を委託しているとしましょう。決算月末時点でその月分がまだ未払いなら、50万円を今期の経費として計上できます。\n\n法人税の実効税率がおよそ23%とすると、50万円 × 23% = 約11.5万円の節税。これが「何もしなければゼロ」だったわけです。\n\n年間を通じて複数の未払費用があれば、合計で数十万円になることも珍しくありません。\n\n## どんな費用が対象になるか\n\n未払費用として計上できる主なものを挙げると、こういったものがあります。\n\n- 外注費・業務委託費:月次で発生しているが翌月払いのもの\n- 顧問料:顧問税理士・社労士・弁護士への報酬\n- 保険料:月払い・年払いで期末時点に未払いのもの\n- 従業員の残業代・賞与:決算月分として未払いになっているもの\n- 地代・家賃:翌月払いで毎月発生しているもの\n\n共通しているのは「決算日時点でサービスの提供が完了している」という点です。ここが大事です。\n\n## 「まだ受けていないもの」はNG\n\n注意が必要なのは、前払いや予約段階のものは対象外だということ。\n\nたとえば「来期使う予定の広告費を今期に計上したい」というのはできません。サービスをまだ受けていないからです。同様に、決算後に締結した契約の費用も対象外です。\n\n「お金が出ていないから損だ」という感覚で無理に計上しようとすると、税務調査で指摘を受けることになります。\n\n判断に迷うものは必ず顧問税理士に確認するのが鉄則です。\n\n## 決算前1ヶ月のチェックリスト\n\n実務的には、決算月に入ったら経理担当者と一緒に「今期分で未払いになっているものはないか」を洗い出すのがおすすめです。\n\n特に見落としやすいのが、毎月定額で発生しているにもかかわらず「翌月請求」になっているサービスです。外注先との契約書や、毎月届く請求書のサイクルを確認するだけで、意外な金額が出てくることがあります。\n\n「払っていないから関係ない」と思っていた費用が、実は今期の節税に使えた——そう気づくのが決算後では遅いんです。\n\n決算が近い社長は、今週中に一度、未払い費用の棚卸しをやってみてください。税理士も喜んで一緒に確認してくれるはずです。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。