先日、年商4億円ほどの製造業を営む社長から、こんな相談を受けました。「税理士に任せてるから大丈夫だと思ってたんですけど、自分でも把握しておくべき経費って何かありますか?」
話を聞いていくと、出張日当も旅費規程もなく、自宅の一室でよく仕事をしているのに家賃按分もしていない。スマホは個人名義のまま、健康診断の費用は自己負担。ざっと計算してみると、年間で軽く100万円以上の経費が計上できていないことがわかりました。
法人実効税率は概ね30%前後です。100万円の経費が増えれば、節税額は30万円変わってきます。3年放置すれば90万円、5年で150万円の差になります。「知らなかっただけ」が、じわじわと積み重なっていくのです。
出張日当――所得税も社会保険料もかからない非課税の手当
もっともインパクトが大きく、かつ使い忘れが多いのが出張日当です。
旅費規程を整備すれば、社長本人を含む役員・従業員全員が出張のたびに日当を受け取れます。しかもこの日当、受け取った側には所得税も社会保険料もかかりません。会社の経費になりながら、手取りも増えるという一石二鳥の仕組みです。
たとえば「国内宿泊出張は1泊5,000円、日帰り出張は3,000円」という規程を作れば、月に数回出張がある社長なら年間数十万円になることもあります。旅費規程の内容に合理性があれば、税務上も認められやすい経費です。
自宅家賃按分――在宅ワークが多い社長ほど損している
自宅の一室を仕事部屋として使っているなら、家賃の一部を会社の経費にできる可能性があります。
計算式はシンプルです。自宅全体の床面積のうち仕事に使っている部屋の割合を算出し、その分の家賃を法人から個人に支払う形にします。たとえば80㎡の自宅のうち20㎡を仕事に使っているなら、家賃の25%が法人経費になる計算です。月の家賃が15万円なら、毎月3万7,500円、年間45万円が経費として落とせます。
ただし、個人が受け取った側は「賃貸収入」として申告が必要になります。節税効果をしっかり出すには、税理士と一緒に設計するのがおすすめです。
スマホ代・インターネット代――個人名義のままにしていませんか?
日常的に仕事に使っているスマホが、個人名義のままになっているケースは意外に多いです。
法人名義に切り替えるか、個人名義のままでも業務利用割合に応じて一部を法人経費にする方法があります。スマホ代を月1万5,000円とすると、業務利用70%なら年間約12万6,000円が経費になります。自宅のインターネット回線も同様に、業務割合に応じて経費計上できます。
小さいようで、積み重なると馬鹿にならない金額です。
健康診断費用――役員・従業員の健診は会社負担が原則
健康診断の費用を自己負担しているなら、それは損をしています。
法人が全役員・全従業員を対象に行う健康診断の費用は、会社の経費として認められます。社長だけでなく、家族従業員がいる場合も同様です。年一回の定期健診だけでなく、人間ドックの費用も一定条件のもとで法人経費にできる場合があります。
領収書を個人で抱えず、会社に請求するようにしましょう。
慶弔見舞金――規程があれば福利厚生費として計上できる
社員の結婚祝い、出産祝い、不幸の際の香典。こういった慶弔費用も、慶弔規程を整備することで会社の福利厚生費として経費計上できます。
個人で包んでいる方も多いですが、きちんと規程を作って会社から支出する形にすれば、経費になるうえに社員の満足度も上がります。金額の目安は慶弔規程として世間相場(結婚祝い1〜3万円、香典1〜2万円程度)に沿っていれば問題ありません。
5つ合わせると、業種や規模によっては年間100万円を超えることも珍しくありません。100万円の経費増加が節税に換算すると30万円。3年続ければ90万円です。「知らなかった」で済ませるには、少し惜しい金額ではないでしょうか。
これらはすべて、正しく整備すれば税務上も認められている経費です。脱税でも節税の裏技でもなく、適法な仕組みを使いきれていなかっただけです。
まだ旅費規程や慶弔規程を整備していないなら、今期中に準備しておくのをおすすめします。一度作ってしまえば毎年使える仕組みになります。顧問税理士に相談しながら整備するのがいちばん安心です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。