先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「自宅の一室を仕事で使っているんですが、家賃って経費になりますか?」と。

月22万円の賃貸マンションに住んでいて、寝室と隣の一部屋をそれぞれ打ち合わせスペース・書斎として使っている。でも家賃は全額個人払いで、会社の経費には一円も計上していないというのです。

正直に言うと、これはかなりもったいない状況です。

「家賃は個人の出費」という思い込み

自宅で仕事をしている社長の多くが、「家賃は生活費だから経費にならない」と思い込んでいます。個人事業主であれば確かに家事按分という複雑な処理が必要で、しかも割合の根拠を問われたりします。

でも法人を持っているなら、話が変わります。会社が賃貸契約を結び、その物件を役員に社宅として貸し出すという仕組みが使えるからです。これが「役員社宅」と呼ばれる節税スキームです。

会社が払う家賃は法人の経費になります。役員個人は会社に賃料相当額(自己負担分)を払うだけ。差額が実質的な節税効果になります。

年間いくら節税できるのか

仮に月5万円分を会社の経費にできたとしましょう。年間で60万円が会社の費用になります。

中小法人の実効税率は法人税・住民税・事業税を合わせるとおおむね25〜30%程度ですが、ざっくり計算すると年15〜20万円の税負担が減る計算です。

月5万円というのはあくまで一例で、都市部で家賃が高い物件ほど経費化できる金額も大きくなります。月10万円を経費化できれば、節税効果は単純計算で年30〜40万円にもなります。これが毎年続くと考えると、見逃すにはもったいない金額です。

「何パーセント払えばいい」とは単純に決まらない

ここで必ず押さえておきたいのが、役員の自己負担額の計算ルールです。

役員社宅を使う場合、役員はただで住むわけにはいきません。国税庁の通達で定められた計算式に基づいて、一定の賃料相当額を会社に払う必要があります。

この計算には物件の固定資産税評価額や床面積が使われ、物件ごとに数字が変わります。「家賃の3割を自己負担すれば大丈夫」「半額払えばいい」といった単純な話ではないのです。

自己負担が少なすぎると、会社が負担した差額が給与とみなされて所得税・住民税の対象になってしまいます。節税のつもりが逆に追徴課税を受けた、というケースは実際にあります。だからこそ、必ず税理士に計算してもらうことが大前提です。

どんな会社でも使えるの?

基本的には法人格があれば活用できます。株式会社・合同会社・医療法人など、法人種別を問いません。個人事業主には同じ制度はないので、これは法人を持っているオーナー社長ならではの特権とも言えます。

賃貸物件でも購入した分譲マンションでも対応できます。ただし、現在個人名義で契約している賃貸の場合は、会社名義への変更を大家さんが認めてくれるかどうかという現実的な壁があります。更新タイミングで切り替える、あるいは引っ越しのタイミングで最初から法人名義にするというパターンが現実的です。

また、高級物件の場合は「豪華社宅」として別の取り扱いになることがあります。一般的な物件との基準については、これも税理士に事前確認しておきましょう。

今すぐ確認しておきたいこと

自宅の一部を仕事で使っているなら、まず以下の3点を整理するところから始めてみてください。

  • 今の賃貸契約が個人名義か法人名義か
  • 物件の固定資産税評価額(通達計算に必要な数字です)
  • 大家さんが法人名義への変更を認めてくれるか

これらの情報が揃えば、税理士に渡すだけでシミュレーションができます。物件情報があれば30分もあれば試算が出ます。

家賃は毎月発生するコストです。今月から仕組みを整えれば、今月から節税が始まります。一度セットアップしてしまえば、あとは毎月自動的に経費として積み上がっていく——それがこの節税スキームの魅力です。

「自宅の家賃、全部個人払いになっている」という方は、今期の決算に間に合うかどうかも含めて、早めに顧問税理士に相談してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。