先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。「出張は月に何回もあるんだけど、旅費ってもう少し節税できるの?」と。
話を掘り下げてみると、Suicaの明細をそのまま経費計上して終わり、旅費規程はない、日当も特に設定していない——そんな状態でした。これ、実はかなりもったいないんです。
旅費交通費には、ちゃんとした節税の「型」があります。大事な順に3つ、見ていきましょう。
まず土台:実費精算と証憑保管を固める
節税の話をする前に、一つ確認しておきたいことがあります。旅費を経費として認めてもらうには、実費に基づいた精算と、領収書や交通系ICカードの明細保管が前提です。
「当たり前でしょ」と思う方も多いですが、社長の交通費をざっくり処理していたり、領収書を捨ててしまっていたりする会社は意外と少なくありません。
税務調査が入ったとき、証憑がなければ旅費全額が否認されるリスクがあります。金額が積み上がっていればいるほど、ダメージは大きくなります。まずここを固めることが、節税の出発点です。
旅費規程を作れば「日当」が経費になる
証憑管理ができたら、次のステップは旅費規程の整備です。
旅費規程とは、「出張に行ったら日当をいくら支払う」というルールを会社として文書化したもの。これを作ると、実費の交通費・宿泊費とは別に「日当」を支払えるようになります。
ここが節税のポイントで、日当は受け取った側が非課税なんです。同じ金額を役員報酬として支給すれば所得税・住民税・社会保険料がかかりますが、旅費規程に基づく日当は課税されません。会社は損金に算入でき、受け取る側は非課税——これが旅費規程の妙味です。
たとえば、月10回出張に行く従業員に日当3,000円を設定すれば、年間36万円が非課税で手渡せます。給与として支払えば手取りは25〜27万円程度になるので、差は歴然です。
ただし、日当の金額が世間の常識からかけ離れて高すぎると、税務調査で過大支給と判断されることがあります。国家公務員の旅費支給基準などを一つの目安にしながら設定するのが無難です。
最大のポイント:旅費規程は役員にも使える
ここが、多くの社長が見落としている最大のポイントです。
旅費規程は従業員だけのものではありません。社長をはじめとする役員にも適用できます。社長自身が出張するたびに、旅費規程に基づく日当を受け取ることができるんです。
数字で見てみましょう。社長が月5回出張し、日当を5,000円に設定したとします。
月の日当は5,000円×5回で25,000円。年間にすると30万円になります。この30万円が、まるごと非課税で受け取れます。
役員報酬として同額を上乗せすれば、所得税・住民税・社会保険料を合わせて30〜40%程度の負担がかかります。手取りベースでは9万〜12万円以上の差です。それが毎年積み上がっていくわけです。
「月5回は少なすぎる」という社長も多いと思います。取引先への訪問、セミナー参加、社外での打ち合わせ——これらはすべて出張に含まれます。実態に合った回数を規程に落とし込むことが大切です。
規程を作るときに気をつけること
旅費規程を整備する際に、いくつか押さえておきたい点があります。
まず、規程は実態に即したものにすること。実際には月1〜2回しか出張しないのに、月20回分の日当を受け取るような設定は税務調査で問題になります。
次に日当の金額設定。役員の場合、日帰り出張で3,000〜10,000円程度、宿泊ありで1泊あたり1〜3万円程度が一般的な目安とされています。業種や会社規模によっても合理的な水準は変わるので、顧問税理士と相談しながら決めるのがおすすめです。
そして、規程を作るだけでなく、出張記録(日程・目的・訪問先)をきちんと残しておく必要があります。日当の支払いも、振込記録や社内精算書で証跡を残しておきましょう。
今期中に整備しておきたい理由
「旅費規程、まだ作っていない」という社長は、できるだけ早めに動くことをおすすめします。
規程は作った瞬間から適用できます。遡って過去分に適用することはできませんが、今日整備すれば今月の出張から日当を支給できます。年30万円の非課税効果も、今期からスタートできるわけです。
すでに規程がある会社も、「役員への日当支給が明記されているか」「金額は現実的な水準か」を一度見直してみてください。旅費交通費は、少し整備するだけで手取りが変わる、地味だけど確実な節税手段の一つです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。