先日、顧問先の社長からこんな一言をもらいました。
「うちの会社、毎年それなりに利益が出てるのに、自分へのボーナスは税金の無駄になるからって言われて諦めてたんですよ」
じつは、この「諦め」が毎年数十万〜百万円以上の損失を生んでいるケースがあります。役員へのボーナスは原則として経費にできない——これは正しい。でも、「原則として」という言葉の裏には、ちゃんと抜け道が用意されています。
役員ボーナスが経費にならない理由
通常の従業員に支払う賞与は、全額損金として処理できます。ところが役員の場合、自分で報酬額を決められる立場にあるため、「決算が良ければボーナスを増やす」という操作が税務上認められていません。そのため、役員に支払う賞与は原則として損金不算入、つまり経費として認められないのです。
これを知らずに役員賞与を支払い、あとから全額否認されて追加納税になった……という話は、残念ながら珍しくありません。
「事前確定届出給与」という合法的な抜け道
ただし、税法には例外が設けられています。それが「事前確定届出給与」という制度です。
シンプルに言えば、「いつ・いくら支払うか」をあらかじめ税務署に届け出ておくことで、役員賞与でも全額損金に算入できる仕組みです。事前に届け出て、その通りに実行すれば経費として認める、という考え方ですね。
届出のタイミングは、原則として株主総会等の決議から1ヶ月以内、または事業年度開始から4ヶ月以内のいずれか早い日まで。決算が近づいてから慌てて使える制度ではないので、そこだけ注意が必要です。
具体的にどれくらい節税できるのか
例えば、夏と冬の年2回、各200万円ずつボーナスを支払う設定で届け出たとします。年間400万円が損金に算入されるため、法人税率が約30%の会社であれば、120万円の節税効果が生まれます。
役員報酬の月額を増やすのではなく、こういった形でボーナスを設計することで、生活資金の受け取り方に柔軟性を持たせることもできます。特に売上が季節によって波がある業種では、受け取りタイミングを業績に合わせて設計できるのも魅力です。
1円でもズレたら、全額アウト
ここで絶対に覚えておいてほしい注意点があります。
事前確定届出給与は、届出通りの金額・支払日を完全に守ることが大前提です。「今月少し資金が足りないから10万円だけ少なく払った」「1日だけ支払い日がズレた」——これだけで全額が損金不算入になります。1円のズレも許されません。
これが怖くて活用を躊躇する経営者もいますが、逆に言えば、きちんとスケジュールを管理さえすれば確実に使える制度でもあります。カレンダーに支払日を登録して、資金繰りも事前に確認しておく。それだけで数十万〜百万円単位の節税が毎年積み重なっていくのです。
届出に必要なもの・手順のポイント
手続き自体はそれほど複雑ではありません。大まかな流れは以下の通りです。
- 株主総会(または取締役会)でボーナスの支払い時期と金額を決議する
- 「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄の税務署へ提出する
- 届出通りの日付・金額でボーナスを支払う
- 支払い時に源泉徴収を行い、給与と同様に処理する
書類の書き方や添付資料については税理士に確認するのが確実ですが、「難しそうだから」と最初から諦めるのはもったいない。仕組みを知っているかどうかで、会社に残るお金が毎年変わってきます。
今期の決算が近い社長へ
「うちには関係ない話かな」と思っていた方でも、来期から設計することは十分可能です。むしろ、決算が終わって利益が確定してから焦っても使えない制度だからこそ、早めに顧問税理士と来期の役員報酬・賞与の設計について話しておくことを強くおすすめします。
毎年黙って損をしている社長が多い制度、それが事前確定届出給与です。知っているだけで使える節税ですから、まずは「うちの会社でも使えますか?」の一言を税理士に投げかけてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。