先日、飲食チェーンを経営する社長からこんな相談を受けました。「妻が店の経理や予約管理をずっと手伝ってくれているんですが、給与は払っていないんですよね。もったいないですか?」
もったいない、どころではありません。毎年かなりの金額を捨てている状態です。
利益を「一人で抱える」のが最大のムダ
法人を持つ社長の多くが、売上が上がるほど税金の重さを実感します。法人税、所得税、住民税……気づけば稼ぎの半分近くが税金になっていた、という声もよく聞きます。
その根本的な原因は、「利益が社長一人に集中しすぎている」こと。所得税は累進課税なので、一人が高い報酬を受け取るより、複数人に分散したほうが税率が下がります。これを合法的に実現するのが、家族を従業員として雇うという方法です。
奥様に月15万円払うと、何が起きるか
具体的な数字で見てみましょう。奥様に月15万円の給与を支払った場合、年間で180万円が会社の経費になります。
法人税率をおよそ25%と仮定すると、この180万円の経費化だけで約45万円の法人税が減ります。単純計算ですが、これだけでも十分インパクトがありますよね。
さらにお得なのが、奥様側にも「給与所得控除」が使えること。給与収入に対しては最低でも55万円の控除が自動的に適用されるため、受け取った給与の全額に税金がかかるわけではありません。法人側の節税と個人側の控除、両方が同時に効く。これが所得分散の醍醐味です。
条件は2つだけ、でもこの2つが全て
この方法には、押さえておくべき条件が2つあります。
ひとつ目は「実際に業務に従事していること」。名前だけを従業員名簿に載せて給与を払うのは、税務調査で100%否認されます。経理補助、顧客対応、SNS運用、店舗管理……どんな業務でも構いませんが、実態が伴っていることが絶対条件です。
ふたつ目は「給与額が業務内容に見合っていること」。同じ仕事を外部に依頼したら月いくらになるか、という視点で考えると判断しやすいです。たとえば週3日・1日4時間の経理補助なら月15万円前後は十分説明できますが、週1時間の手伝いに50万円を払っていたら、それは税務署も首をかしげます。
この2つを守れば、家族への給与は正当な節税手段として機能します。
お子さんへの給与も検討する価値あり
対象は奥様だけではありません。成人しているお子さんや、実際に事業を手伝っている親御さんへの給与も同様の効果があります。
大学生のお子さんが自社のECサイト運営やSNS管理を担当しているなら、月5〜8万円程度の給与を支払う体制を整えておくのは合理的です。お子さん側の年収が103万円以下なら所得税もかからず、家族全体でみると税負担がぐっと軽くなります。
「やっていること」を記録に残す
実務上で特に大切なのが、業務の記録を残すことです。勤務日時、担当業務の内容、成果物……こうした記録が税務調査の際の根拠になります。
タイムカードやシフト表でも構いませんし、メッセージアプリのやり取りが業務指示の記録として機能することもあります。「実態がある」ことを第三者に説明できる状態にしておく、それだけで十分です。
節税の「設計」は早いほど効く
家族への給与支払いは、始めるタイミングが早いほど効果が積み上がります。今期から奥様を正式に雇用する形を整えれば、それだけで今年の決算が変わります。
給与額の設定、社会保険の加入要否、源泉徴収の手続き……細かい論点は税理士と一緒に整理するのがベストですが、「家族が実際に働いているのに給与を払っていない」という状況は、今すぐ見直す価値があります。
家族の力を借りてビジネスを支えているなら、その貢献を給与という形で正当に評価する。それが経営としても、節税としても、正しい姿だと思います。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。