先日、製造業を営む社長からこんな言葉をもらいました。
「毎年夏に自分へボーナスを出したいんですけど、どうせ経費にならないから、もう諦めてるんですよね」
この一言、すごくもったいないと思いました。実はある届出を一枚出すだけで、役員へのボーナスを正式に経費として認めてもらえる制度があるからです。知っているか知らないかだけで、毎年数百万円の差がつくこともあります。
役員ボーナスがそのままでは経費にならない理由
まず前提として、なぜ役員ボーナスが経費にならないのか、簡単に触れておきます。
通常の従業員へのボーナスは、支払った時点で全額経費(損金)になります。ところが役員は違います。役員報酬は「定期同額給与」といって、毎月同じ金額を払い続けることが経費として認められる大原則になっています。
理由はシンプルで、役員は会社の利益を見ながら自分の報酬を自由に操作できてしまうからです。「今期は利益が出たからボーナスを多めに出して税金を減らそう」というのを野放しにすると、税収が不安定になる。だから税務上、特別なルールが設けられているわけです。
ただし、例外があります。それが「事前確定届出給与」という仕組みです。
「事前に届け出る」だけで経費になる
事前確定届出給与とは、文字通り「いつ・いくら払うか」を事前に税務署へ届け出ることで、役員ボーナスを正式な経費として認めてもらえる制度です。
届出に書くのは、支払日と金額の2つだけ。たとえば「7月25日に300万円を支払う」と届け出て、実際にその通りに支払えば、その300万円を丸ごと損金に算入できます。
法人税率を約30%とすると、300万円の経費化で約90万円の節税になります。年に2回(夏・冬)ボーナスを届け出て合計600万円を経費にすれば、180万円前後の節税効果が出る計算です。冒頭でご紹介した社長も、複数年にわたってこの制度を活用し、累計200万円超の節税を実現しました。
失敗しないための2つのポイント
この制度、仕組み自体はシンプルですが、厳格に運用しないと全額アウトになります。注意すべきポイントは2つです。
1. 届出は必ず期限内に提出する
株主総会などで役員報酬を決定した日から1ヶ月以内、または会計期間開始から4ヶ月以内のいずれか早い日が届出の期限です。この期限を1日でも過ぎると、その年のボーナスは一切経費として認められません。「うっかり忘れた」では済まない、取り返しのつかないミスになります。
2. 届け出た通りの金額を、届け出た日に払う
届出後に「やっぱり100万円増やしたい」「今月は資金繰りが厳しいから来月に回そう」は通用しません。金額・日付のどちらかが届出とずれると、その支払い全額が経費として否認されます。一円でもズレたらアウト、という厳しいルールです。
この2点を守れば、ルールとして完全に合法の節税策です。
こんな社長にとくに有効です
事前確定届出給与が特に効果を発揮するのは、次のようなケースです。
- 毎月の役員報酬は抑えめにして、業績連動でボーナスを出したい社長
- 決算期に利益が出そうなとき、合法的に経費を増やしたい社長
- 従業員と同じようにボーナス文化を自分にも取り入れたい社長
逆に、業績が読みにくく資金繰りが不安定な会社には少し難しい面もあります。届出通りに払えなかった場合のリスクを考えると、ある程度キャッシュに余裕がある段階で取り組むのが安心です。
今期の決算前に動くのが正解
この制度で一番多い失敗は「知ったときにはもう期限が過ぎていた」というものです。節税は、タイミングが命です。
期末が近づいてから慌てて動いても間に合いません。理想は、新しい事業年度が始まってすぐ、あるいは株主総会のタイミングで顧問税理士と一緒に届出の準備を進めることです。
もしまだ事前確定届出給与を活用していないなら、次の総会前に一度税理士へ相談してみてください。「自分のボーナスを経費にできるか確認したい」と一言伝えるだけで話が進みます。毎年数十万〜数百万円の差になる話ですから、動かない理由はありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。