先日、年商3億円ほどの卸売業を営む社長からこんな相談を受けました。

「不動産を個人で買おうと思ってるんですけど、法人名義のほうがいいって聞いて……実際どうなんですか?」

その場で30分ほど話したところ、社長の顔色がだんだん変わっていきました。「なんで誰も教えてくれなかったんだろう」と最後につぶやいていたのが、今でも印象に残っています。

結論から言えば、法人で不動産を購入することには、個人では到底かなわない節税メリットが少なくとも3つあります。順番に見ていきましょう。


第3位:建物の取得費用を毎年経費にできる

不動産を購入すると、建物部分については「減価償却費」として毎年経費に計上できます。これは法人・個人どちらでも使える制度ですが、法人のほうが圧倒的に使い勝手がいいんです。

たとえば、5,000万円の収益物件を取得したとします。建物の法定耐用年数が40年だとすれば、毎年125万円を経費として落とせる計算になります。実際にお金が出ていかないのに、帳簿上は費用として認識される——これが減価償却の強みです。

法人の場合、この減価償却を「任意償却」で調整できるケースもあり、利益が多い年に多く経費計上するといった柔軟な使い方が可能です。個人の場合は原則として定額法しか選べないため、選択肢の幅が違います。


第2位:ローンの支払い金利がまるごと経費になる

不動産購入にあたって融資を使う方は多いと思います。そのときに発生する「利息」の扱いが、個人と法人では大きく異なります。

個人の場合、住宅ローン控除などの仕組みはあるものの、控除額には上限があり、投資用不動産だと話がまた変わってきます。一方、法人であれば事業に関連するローンの支払い金利は全額「損金(経費)」に算入できます

たとえば年間の支払い利息が150万円あるとすれば、その150万円がそのまま利益から引かれます。利益が圧縮されれば、当然ながら税金も減る。シンプルですが、積み重なるとかなりの金額差になります。


第1位:法人税率と個人の所得税率、その差は30%以上

これが最大のポイントです。不動産から得られた利益に対して、個人と法人ではかかる税率がまったく違います。

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税制度。住民税も合わせると、所得が多い方では最大55% にまで達します。1,000万円の利益があれば、550万円が税金で消えていく計算です。

対して、法人税の実効税率は規模や地域にもよりますが、最大でも23.2%前後に収まります。同じ1,000万円の利益でも、税負担は230万円ほど。その差は300万円以上になります。

すでに役員報酬などで個人の所得が高い水準にある社長ほど、この差が如実に出ます。「どうせ不動産収入も個人で受け取ればいい」と思っていると、毎年数百万円単位で税金を余分に払い続けることになりかねません。


注意点も知っておいてほしいこと

もちろん、法人での不動産取得にはコストや手間も伴います。登記費用や不動産取得税、法人維持のランニングコストなど、「節税できた分」と「新たにかかるコスト」をきちんと比較することが前提です。

また、融資の審査は個人名義よりも法人名義のほうがハードルが上がるケースもあります。金融機関との関係性や自社の決算内容によって、使える手が変わってきます。

「節税になると聞いたから、とりあえず法人で買った」では本末転倒です。目的は節税ではなく、手元に残るお金を最大化すること。そのための手段として法人活用があると理解しておきましょう。


不動産の購入を検討しているなら、個人か法人かの判断を後回しにしないでください。取得後に「やっぱり法人にしておけばよかった」と気づいても、変更には大きなコストがかかります。

今期の決算が近い方も、来期以降の投資を考えている方も、まず一度、顧問税理士に「法人での不動産取得をシミュレーションしてほしい」と声をかけてみることをおすすめします。その一言が、数百万円の差を生むことがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。