先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「今期は思ったより利益が出そうで、9月末の中間決算までに何か手を打てないか」というものです。

決算対策というと大きな設備投資や保険を思い浮かべる方も多いのですが、実はもっと手軽で、しかも即効性のある制度があります。それが「少額減価償却資産の特例」です。

30万円未満の備品が、その場で経費になる

本来、パソコンやオフィス家具などの備品は、購入してもすぐには全額を経費にできません。耐用年数に応じて数年かけて少しずつ経費化する「減価償却」という処理が必要になるからです。

ところがこの特例を使うと、1つあたり30万円未満の資産であれば、購入した年度に全額を経費として計上できます。しかも合計で年間300万円までという、かなり実用的な枠が用意されています。

パソコン、複合機、応接セット、業務用の工具や機械装置など、対象になる範囲は意外と広いのです。

300万円分使うと、どれくらい税金が浮くのか

仮に300万円分の備品を購入し、そのまま経費に計上できたとします。中小企業の実効税率はおおむね30〜34%程度ですから、単純計算で約90万円から102万円ほど、法人税等の負担が軽くなる計算になります。

決算月直前になって「今期の利益が想定より多い」と気づいたとき、この特例は非常に使い勝手のいい選択肢です。何しろ、必要な備品を前倒しで買うだけで済むからです。

ただし、税金が消えるわけではない

ここで一つ、冷静になっていただきたい点があります。この特例の多くは、税金そのものが減るのではなく、支払いのタイミングが後ろにずれる「課税の繰り延べ」にすぎないということです。

つまり、今期に一括で経費にした分、来期以降は減価償却費として計上できる金額が減ります。将来の利益が増えたときに、その分の税負担が戻ってくる仕組みなのです。

とはいえ、資金繰りの観点では大きな意味があります。今期の納税額を抑えて手元資金を厚くしておき、その分を事業投資や借入返済に回せるなら、繰り延べであっても十分に価値のある選択です。

誰でも使えるわけではない

この特例を使えるのは「中小企業者等」に限られます。具体的には資本金1億円以下の法人などが対象で、大企業の子会社など一部除外されるケースもあります。

また、青色申告法人であることも条件になります。白色申告のままの会社は対象外ですので、顧問税理士に自社が要件を満たしているか、事前に確認しておくことをおすすめします。

9月末までの購入・使用開始がカギになる

見落とされがちなのが、タイミングの要件です。中間決算や本決算のタイミングで経費計上を狙うなら、対象となる資産を「事業の用に供した」、つまり実際に使い始めた日が期内である必要があります。

発注しただけ、納品されただけでは不十分で、実際に使用を開始していることが求められます。9月末までに間に合わせたいのであれば、遅くとも今月中旬には発注を済ませておきたいところです。

年度末が近づいてから慌てて業者に連絡しても、納期が間に合わないというのはよくある話です。決算対策は思い立ったが吉日、というのが実感としてあります。

まだ今期の備品購入計画を立てていないなら、9月末というタイムリミットを意識して、今のうちに何を買うべきか整理しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。