先日、賃貸アパートを2棟持っている社長からこんな相談を受けました。「中古の木造アパート、もう22年も同じ額で減価償却してるんだけど、これって普通なの?」

聞けば、購入時に顧問税理士から特に説明もないまま、法定耐用年数の22年でずっと均等に経費計上していたそうです。正直に言うと、これはかなりもったいない状態です。

木造アパートは「築22年超」がひとつの境目

建物の減価償却費は、法定耐用年数に応じて毎年の経費計上額が決まります。木造アパートの法定耐用年数は22年。新築で買えば、この22年間で少しずつ経費化していくのが基本です。

ところが中古で取得した場合、話が変わります。特に「法定耐用年数をすでに全部使い切っている」木造物件、つまり築22年を超えている物件については、税務上「簡便法」という特別な計算方法を使えるのです。

簡便法のルールはシンプルで、法定耐用年数の20%相当の年数を、新たな耐用年数として使えます。22年×20%で4.4年、1年未満は切り捨てるので、耐用年数はなんと4年になります。

22年で割るのと、4年で割るのとでは桁が違う

仮に建物価格が5,000万円だったとします。22年で均等に減価償却すると、年間の経費は単純計算でおよそ227万円です。

これが耐用年数4年になると、年間の経費は1,250万円前後まで跳ね上がります。同じ物件、同じ建物価格なのに、経費として計上できる額が年間で1,000万円近く変わってくるわけです。

先ほどの社長のケースのように、本来なら簡便法が使えたはずの物件を22年でずっと均等償却していたとすると、初年度だけで数百万円、物件の規模によっては500万円規模の税負担差が生まれることも珍しくありません。所得税・住民税・法人税、いずれの税率帯にいる方でも、この差はインパクトが大きいはずです。

ただし「得をした」わけではなく「早く経費化した」だけ

ここで一つ、誤解してほしくないポイントがあります。簡便法は税金そのものを安くする制度ではありません。

本来22年かけて経費化するはずだった減価償却費を、4年に圧縮して前倒しで計上しているだけです。中身は課税の繰り延べであり、4年目以降は経費として計上できるものがなくなるため、その分だけ将来の税負担は相対的に重くなります。

とはいえ、この「前倒し」には明確なメリットがあります。今まさに利益が出ていて税負担が重い年に、経費を厚く計上できるという点です。将来の税負担が増えるとしても、資金繰りに余裕がある今のうちに手元にキャッシュを残せるなら、それは十分に価値のある選択です。

特に、物件購入後まもない時期や、他の事業で大きな利益が出ている決算期には、この簡便法の効果を最大限に活かせます。

こんな物件は一度チェックしておきたい

次のような条件に当てはまる物件をお持ちの方は、一度顧問税理士に確認してみることをおすすめします。

  • 木造または木骨モルタル造で、取得時点で築22年を超えていた
  • これまで簡便法を使わず、法定耐用年数のまま均等償却してきた
  • 今期または直近で大きな利益が出ている、あるいは出る見込みがある

すでに数年間、簡便法を使わずに申告してしまっている場合でも、あきらめる必要はありません。修正申告や更正の請求で是正できるケースもあるため、まずは現状の耐用年数の設定がどうなっているか、確認することから始めてみてください。

減価償却は地味な論点に見えて、実は初年度のキャッシュフローを大きく左右する項目です。まだ耐用年数の見直しをしたことがないなら、決算前の今のタイミングで一度洗い出しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。