先日、オフィスの内装工事を終えたばかりの社長から、こんな話を聞きました。

「工事費、見積書のまま全部『建物』でまとめて計上しちゃったんだけど、これで良かったのかな」

結論から言うと、内装工事の内容によっては、まとめて建物本体に計上すると、償却できる期間が本来より長くなってしまうことがあります。逆に言えば、同じ工事費でも内訳を分けて計上するだけで、経費化のスピードが大きく変わるケースがあるのです。

建物とひとまとめにすると、なぜ償却が遅くなるのか

建物の法定耐用年数は、構造にもよりますが数十年単位と長めです。鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所であれば47年、木造でも22年前後というのが一般的な目安です。

内装工事の費用をすべて「建物」の勘定でまとめて計上してしまうと、電気配線一本、給排水管一本まで、この長い年数で少しずつしか償却できません。工事費が数百万円規模になると、経費化に何十年もかかる計算になってしまいます。

電気設備・給排水は「建物附属設備」、看板は「構築物」

ここで見落とされがちなのが、内装工事の中身は一つではないという点です。

電気設備や給排水衛生設備は、税務上「建物附属設備」という別の資産区分に分類できます。目安として耐用年数15年程度とされることが多く、建物本体より大幅に短くなります。

看板や独立した装飾物のような部分は、さらに別の「構築物」として扱えることがあります。材質にもよりますが、10年台程度の耐用年数になるケースもあり、建物本体でまとめるより明らかに早く償却が進みます。

同じ工事費でも、どの勘定科目に乗せるかで、経費になるスピードがまったく違ってくるわけです。

ポイントは見積書の段階にある

この区分は、工事が終わったあとに帳簿だけで操作できるものではありません。ポイントは、工事業者に見積書を依頼する段階で、科目ごとに内訳を分けてもらうことです。

「内装工事一式 500万円」という一行の見積書では、経理上もその通り一括計上せざるを得ません。ところが「電気設備工事○○万円」「給排水設備工事○○万円」「造作工事○○万円」というように内訳を分けてもらえれば、それぞれを対応する資産区分で計上できます。

手間としては、工事業者への依頼が一往復増える程度です。それだけで償却スピードが変わるなら、決して大きなコストではないはずです。

分けるときに気をつけたいこと

注意したいのは、区分はあくまで実態に即している必要があるという点です。工事の実態と関係なく、都合よく耐用年数の短い科目に寄せて計上することはできません。

見積書の内訳が、実際に施工された設備の内容と一致していることが前提になります。あとから税務調査で内訳を聞かれたときに、見積書と請求書、工事図面などで説明できる状態にしておくことが大切です。

また、既存の建物を改修する場合と、新築時に一体で設置する場合とでは、区分の考え方が変わることもあります。工事の規模が大きい案件では、契約前に顧問税理士に見積書の内訳案をチェックしてもらうと安心です。

これから内装工事や店舗改装を予定しているなら、見積もりを依頼する段階で「科目ごとに分けてもらえますか」と一言添えておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。