先日、年商3億円の製造業の社長からこんな相談を受けました。「うちはまだ税務調査なんて来ませんよね」。悪気なく、本当にそう思っていらっしゃる様子でした。

ですが実際のところ、税務調査は会社の年商規模によって「狙われやすさ」がはっきり分かれています。しかも多くの社長が思っているより、ずっと早い段階から調査官の目は向いています。

税務調査は「成長のタイミング」で来る

税務調査というと、粉飾決算や脱税のイメージを持たれがちですが、実態はもっと地味です。国税当局は限られた人員で効率よく成果を出す必要があるため、申告内容にズレが出やすい規模の会社を優先的に選ぶ傾向があると言われています。

つまり狙われるかどうかは、悪いことをしているかどうかではなく、経理体制が会社の成長スピードに追いついているかどうかで決まる部分が大きいのです。

3位は年商1億円前後、急成長ゆえの緩み

狙われやすい規模の3番目は、年商1億円前後だと言われています。売上が急に伸びる時期は、経理担当者の増員や体制整備が後回しになりがちです。

領収書の整理、勘定科目の判断、在庫や売掛金の計上タイミングといった基本的な部分に、成長のスピードに経理が追いつけていないほころびが出やすいのがこの規模です。社長自身が現場に出ずっぱりで、経理を任せきりにしているケースも少なくありません。

2位は年商3億円、役員報酬と交際費の設計が甘くなる規模

2番目に狙われやすいのが年商3億円前後です。この規模になると利益はしっかり出ているのに、役員報酬の決め方や交際費の使い方が「昔からの慣習」のまま放置されているケースが目立ちます。

特に役員報酬は、期の途中で増減させると損金として認められなくなるリスクがあります。交際費も、上限枠や損金算入のルールを意識せずに計上していると、調査で指摘される典型的なポイントになります。

利益が出ている会社ほど、税負担を軽くしたい気持ちから節税策に手を伸ばしがちですが、設計の甘さがそのまま調査対象になりやすい理由だと考えられます。

そして1位は年商5億円、大きくなるほど目立つ

そして1位に挙げられるのが、年商5億円前後の会社です。ここまで来ると利益額も申告額も相応に大きくなり、1件の調査で見込める追徴税額も大きくなります。調査官からすれば、限られた時間で成果を出しやすい規模とも言えるでしょう。

さらにこの規模では、複数の関連会社や不動産、役員貸付金など、取引が複雑化しているケースも増えます。取引が複雑になればなるほど、申告内容と実態にズレが生じやすくなるのも事実です。

年商5億円は、多くの社長にとって「ようやく波に乗った」と実感できる規模かもしれません。ですが税務署から見れば、まさにそこが最も注目すべき規模になっている可能性が高いのです。

今からできる備え

規模が大きくなるほど調査のリスクが上がるのであれば、待つのではなく先に手を打っておくのが得策です。

  • 役員報酬は期首から改定し、期中変更を避ける
  • 交際費・会議費の線引きを社内ルールとして明文化する
  • 在庫・売掛金の計上タイミングを毎期同じ基準で統一する
  • 関連会社間の取引は契約書と価格根拠を必ず残す

特別なことをする必要はありません。基本的な部分を丁寧に整えておくだけで、調査が来たときの受け答えは大きく変わります。

年商が伸びているタイミングこそ、経理体制と役員報酬の設計を見直す好機です。まだ手を付けていないなら、次の決算までに一度、顧問税理士と一緒に棚卸ししておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。