先日、先代から会社を継いだばかりの後継社長から、こんな相談を受けました。「毎年受けている健康診断の費用を、会社の経費にできないでしょうか」と。

結論から言うと、条件を満たせば福利厚生費として経費にできます。ただし、この条件を勘違いしている社長がとても多いのが実情です。うっかり自分だけ受けて経費にしてしまうと、税務調査で給与認定され、追徴課税を受けるケースも珍しくありません。

対象は「合理的な基準」で全従業員に

福利厚生費として認められる最大のポイントは、健康診断の対象者を合理的な基準で決めているかどうかです。

例えば「35歳以上の全従業員」「勤続1年以上の正社員全員」といった、誰が見ても納得できる線引きであれば問題ありません。年齢や勤続年数といった客観的な基準を就業規則や社内規程に明記しておくことが大切です。

逆にNGなのは、社長や役員、あるいは特定の気に入った社員だけを対象にするケースです。この場合、たとえ制度の名目が「健康診断」であっても、実態としては特定の individuals への利益供与とみなされ、給与として課税されてしまいます。

会社が医療機関へ直接支払うことも要件

見落とされがちなのが、費用の支払い方法です。

社員が一旦自分で医療機関に支払い、その後会社が本人に精算する形では、給与扱いとされるリスクが高まります。福利厚生費として認められるためには、会社が医療機関に直接費用を支払う流れにしておくのが基本です。

人間ドックの相場は、一般的な健診で3万円前後、オプション検査を含めると10万円前後になることもあります。金額が大きくなるほど、税務署のチェックも厳しくなると考えておいた方がよいでしょう。

実際にあった相談例

先ほどの後継社長のケースでは、先代が「自分だけ人間ドックを受けて経費にしていた」という状態が続いていました。これは典型的な給与認定リスクのパターンです。

そこで、次のように制度を整理しました。

  • 対象を「勤続3年以上かつ40歳以上の正社員」に統一する
  • 健診機関への支払いを会社の口座から直接行う
  • 就業規則に健診制度の条文を追加する

この3点を整えるだけで、翌年から堂々と福利厚生費として計上できるようになりました。社員側にとっても「自分も対象になる」という安心感につながり、採用面でも地味にプラスに働きます。

金額の相場感にも注意したい

もう一つ気をつけたいのが、金額の妥当性です。役員だけが極端に高額な人間ドックを受け、一般社員は簡易な健診で済ませているような格差があると、やはり実質的な役員優遇とみなされる可能性があります。

役職による多少の差は許容されますが、あまりに差が大きい場合は、税務調査で指摘される火種になりかねません。

まだ健康診断の費用を経費にできる状態になっていないなら、今期のうちに対象基準を就業規則に明記し、支払いフローを見直しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。